表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/74

メルルの貞操

 夢の中でメルルは魔王として世界を支配していた。

勇者を倒し魔族の繁栄を勝ち取ったメルルは、サキュバスや魔族たちに祝福されながら高らかに剣を掲げて勝利を宣言した。


「聞け!全ての魔族たちよ!私たちは勝利したのだ!」


「魔王様ー!」


「メルル様ー!」


 勝利宣言に幾多の祝福と喜びの声があがった。

 祝杯の酒瓶たちが何本も威勢よく開けられてると酒の雨が降り注いだ。

剣を掲げながらメルルは勝利の美酒に体を濡らした。

 しかし、その酒は生暖かく嫌にねちっこい。

さらには魔族たちのメルルを呼ぶ声は、次第に吐息交じりの荒っぽいものへと変わっている。

耳に掛かるような荒い吐息が徐々にはっきりと聞こえてくる。発情したような声がだんだんと近くなって、メルルは何があったのかと慌てふためく。


「どうしたんだ、みんな?」


「魔王様…ハァハァ…魔王様…ハァ」


 表情を無くした魔族たちがメルルにジリジリと迫ってくる。

目をハートにして荒い吐息を漏らす魔族がゆっくりと、しかし確実にメルルに向かっている。


「おい、どうしたんだ、それ以上近づくな…ねぇ、ねぇってばー!」


 目が開いた。パッと悪夢から目を覚ますと、そこには夢の続きのようにサキュバスの顔が目前にある。

目にはハートが浮かび、荒い吐息をメルル向かって吐き出すと、零れた涎が頬を伝った。


「ひぃ!」


「あぁん、魔王様…起きてしまいましたか」


「え、ちょ、なにしてんの!なんで裸なの、え、ねぇ!」


 サキュバスはメルルに馬乗りの状態になっており、さらには衣類を身にまとっていない。

混乱した頭は何故裸なのか、何故馬乗りにされているのか考えた。まだ悪夢は終わっていなかったのか、いや、この感覚は現実のもの。じゃぁ何故サキュバスは発情しているんだ。

パニック状態になった耳元にサキュバスの熱い吐息がかかった。


「魔王様、わたくし、魔王様の子を孕みたいです♡」


 耳をねっとりとした舌が這った。

そんなことなどされたことがないメルルは、例えようのない感覚に体がビクリと反応してしまう。


「ちょ、ちょっと何言ってんの!?女同士で子供できるわけないでしょ!」


「お任せください♡魔王様の卵細胞をわたくしの中に入れれば、わたくしの魔力で受胎することが可能なのです♡」


「いやいやいやいやいやいや理屈はいいから!」


「魔族の未来のためにも、魔王様は子孫を残すべきなのです!」


「目をハートにして息荒げて言っても何の説得力もないから!」


 何を言ってもサキュバスはメルルから離れようとはしない。

出会ってから従順にしたがっていたものの、ここにきて初めてサキュバスも魔族であると認識した。

何故乳がデカいのか聞いたときに、サキュバスは淫魔であると言っていたのを思い出し、メルルはそれゆえに襲われているのだろうと察した。


「早く魔王様のモノをわたくしにくださいまし♡」


 スイッチの入ったサキュバスは止まることがない。

これでは自身の貞操が危ない。このままではサキュバスに食われてしまうのは確実。


「ちょっといい加減にしてくれる!?」


 思い切り目の前で揺れる乳房を引っぱたいた。パチィンと弾ける音がすると、サキュバスは嬌声をあげながら倒れた。

やっと馬乗り状態から解放されたメルルは咄嗟にシーツを羽織って寝室から逃げ出した。

このままではサキュバスに初めてを奪われかねない。


「そうだ、魔剣なら…魔剣レーヴァティンならなんとかしてくれるかも」


 玉座に置いてきた魔剣を思い出すと、シーツ一枚の姿で素足で駆けだした。

玉座まではそう遠くない。走ればすぐにでも着くはず。シーツで胸元と下半身を隠しながら暗い城の中を駆けた。


「魔王様ー♡」


「ひぃ!」


 背後からした声に思わず振り返ると、素っ裸のサキュバスが宙を舞いながら全速力で追いかけてくる。

相変わらず目はハートになっているし、舌を出して涎を零しながら恍惚する顔は完全に性欲の化身になっているように見えた。


「もっとわたくしを嬲ってくださいましー!♡」


「ひぃぃぃ!ドM属性も持ってやがる!」


 逃げねば、さもなければ。

脳裏に過るお腹の大きくなったサキュバス。隣に寄り添うメルル。ママが二人という異様な状況。

いや、状況的にはメルルがパパでサキュバスがママ?

わけのわからない状況が脳裏に連想される。

そんなことになったらどうしよう。メルルは涙を流しながらひたすらに駆けた。


 早くなんとかしなければ、扉はもうすぐそこまで迫っている。

わずかな距離なのに長く感じる、もうすぐ後ろにはサキュバスの羽音が近づいている。


「魔王様ぁー♡」


 サキュバスがメルルの背後に抱きついた。メルルは扉に手を伸ばすと、大きな音をあげて扉が開かれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ