表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ナポレオン27人目の元帥 ~Le 27ème maréchal de Napoléon~  作者: なっかー
Chapitre Un ~Maison de Brunet(ブリュネ家)~
3/7

Épisode 2


 ――1777年クリスマス ブリュネ家


 子ども二人を見て和んでいる親たちとそれを見て笑う親たちを見た、その他の子どもたちの抱いた感想は様々であった。

「母上も父上も変わらないな」

 そう呟いたのはヴィクトル・ド・ブリュネ(ジャンの長兄)であった。

 そのヴィクトルに彼の弟(ジャンから見ると兄)が話しかけた。

「本当にそうですね。ただ、そんな僕らもまた誰かに見られているかもしれませんよ」

 弟は不安そうに言うが、彼らは本当に見られてはいなかった。

 いや、見られていないことになっている。

 この屋敷には少なからずいる使用人たちの目がどのような時にもあるが、彼らは優秀なので何の問題もない。


 ちなみにこの屋敷の使用人は必要最低限の人数で待遇も高い。



 ヴィクトルと彼の弟が話していると、そこにヴィクトルの妹(マルタンとジャンよりは年上)がやって来た。

「確かに父上と母上は似た者同士お似合いだね。まあ、あなたたち二人もだけど」

 さらりと馬鹿にされた二人はすかさず反論した。

 「マルタンに似ていると思うことはあるが父上や母上とは少し違う」とか、「そういう姉上も大概だ」と。


 それから暫く三人で口論が始まった。

 止める者は当分現れない。

 しかし、いくら仲が良い兄弟とはいえ、議論が白熱すると流石に周囲も気にするようになる。



 ――現在、ジャンとエミリーは仲良く話している。それを父親二人が見ている。そして更にその様子を母親二人が見ている。

 その状況でブリュネ家四人兄弟のジャンを除く三人で「楽しく」やっている。


 その状況下で口論を止められる者は誰か。

 思えばベルナール家の人間は五人いた。一人はエミリーで、父と母でさらに二人。

 つまりエミリーの兄弟姉妹は二人いる。



 果たして、その二人は仲良く食事をとっていたが、急に騒がしくなった方を見て、エミリーの弟が言った。

「姉上、何故あそこは賑やかなの?」

「ブリュネ家の兄弟はみんな仲が良いから、昔からよくあんな感じで口論になるのよ」

 姉は続ける。

「じゃあお姉ちゃんが何か言ってきてあげるわ。あなたはそこで待っててね」


 そして姉はブリュネ兄弟の許へと駆けて行った。

 かくして七歳であるエミリーよりさらに年下の、幼い弟が一人取り残された。

 そこへは使用人たちが素早く向かうのであった。



 ベルナール家の長女は唐突にブリュネ家の子どもの口論に割り込んだ。

「ブリュネ家の皆様は随分とお元気ですね」

 数秒の空白の後、最も早く言葉の意味を理解した年長のヴィクトルがブリュネ家で一番早く答えた。 

「あ、そうですね。これではせっかくのパーティーが台無しになるところでした」

 それに続いて他の二人も答えた。

「お騒がせいたしましたわ」

「すみません。またやらかしてしまいましたね」


 三人とも、今日も熱が入ってしまったと思っていて、気まずくなっている。

 普段ならば彼らに加えてジャンもいるため、彼を交えて更に盛り上がってしまう。

 そういう訳で、ストッパーの存在は大切になるが、親ですら強制的手段以外ではほぼ止められない。



 無事に口論を終息させた一同は、ベルナールの長女を加えてまた話し始めた。

 最初に口を開いたのはまたしてもヴィクトルだった。

「ところで我が弟の未来の義理のお姉さん」

「何でしょう」

 ヴィクトルの言う"弟の未来の義理のお姉さん"――ベルナールの長女が応えた。

「近いうちに私の父上がプロヴァンスとイタリアの方に行くと言っていましたが、フェルナンさんは何か仰っていましたか」

 親の仕事を完璧に覚えているのは手伝っているヴィクトルだけなのだろうか、他の皆は知らなかったというような表情を見せた。

「聞いてみます。多分私は残ることになりそうですが」

 レティシアがそう答えると、ヴィクトルは仲間を見つけたようで感動しながら言った。

「普通に考えれば僕もどうせお留守番です。イタリアに行けない者同士よろしくお願いしますね」



 そこでようやく親たちのジャンとエミリーへのちょっかいが終わったらしく、他の子どもたちの大半が集まっているヴィクトルたちの方に向かってきた。


 ヴィクトルは己の父、ドミニクに手を振りながら声をかけた。

「父上。ちょっと来てください」

「どうした」

「この間、父上がプロヴァンスとイタリアに行かれる計画を立てていたはずですけど、我が家からは誰が行くことになりますかね」

 ドミニクは少し悩みながら答える。

「私は出かけるからヴィクトルには残ってほしい。ということはシャルロットにも残ってもらうべきだな」

「やっぱりそうなりますよね」

 ヴィクトルは半ば分かっていたような口ぶりだった。

「二人を信頼しているから当然だろう。少し申し訳ないが」

「信頼が時には恨めしいときもあるんですよ。まあ、お気になさらず行ってきてください」


 続いてドミニクは、ヴィクトル以外の子どもたちに呼びかけた。

「他の皆は自由に決めていいぞ」


 姉――長女は忙しいので断り、弟――次男は然して忙しくないので行くことになった。



 打ち合わせを続けていたドミニクとヴィクトルの許にフェルナンがやってきた。

「そちらは誰が行くか決まりましたか」

 ブリュネ家からは次男とジャンを連れていく。

 フェルナン・ベルナールにはエミリーとその弟が同行することになったという。

「じゃあイタリアに行くのは他に部下2人を合わせて8人だな」




 そこにシャルロット・ド・ブリュネ(ジャンの母)とヴィクトリア・ベルナール(エミリーの母)がやってきた。

 シャルロットはワインの瓶を片手にドミニクに声をかける。

「あなたたちも飲むわよ」

「おお、これは先月ボルドーで頂いたワインじゃないか」

 ドミニクが感動していると、フェルナンも相槌を打った。

「あの人、毎度いい贈り物をしてくれますよね。きっとこれも間違いないはずです」


 顔が既に赤みを帯びているシャルロットが酒を勧める。

「とにかく今日は飲みましょう」

 シャルロットよりも酔っているヴィクトリアが続ける。

「飲むぞ~」



 そして夜は更けていった。



TIPS No.2


ルイ14世(Louis XIV)


 日本で恐らく一番有名なフランス王。別名、太陽王。

 ルイ14世といえば戦争と宮殿である。ルイ14世の治世には4つの大規模な戦争があった。戦争には莫大な資金がかかり、結果として国庫を圧迫し、財政難を招いた。これはフランス革命の遠因になる。

 ヴェルサイユ宮殿を作るよう命じたのも彼である。この宮殿は大規模で見処も多く、芸術性も高い。そのため、現代で見て回るのには1日以上は必要と言われている。ルイ14世は幼少の頃、フロンドの乱という貴族反乱の際に恐ろしい思いをしており、ヴェルサイユに宮殿を作ったのはパリにトラウマがあるから、とも言われている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ