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第五話 最後の言葉
ありがとう
一人の少女は、唯一の家族に向かって呟いた
それは音として発生せず、口がただ動いただけだった
それでも相手には届いたようで、相手は何度もうなずいていた
少女の目は、少しずつ光を失っていってしまっていた
「死」が目前だというのは誰がいても明らかだった
ありがとう
少女はもう一度口を動かした
二度と出ないはずの声
奇跡は、起きた
声が出たのだ
だが、それは刹那
少女の目は完全に閉じた
最後の言葉
その一言ですら
儚いもの
僕「いい話だったな」
猫「上っ面だけね」
僕「つまりはあれだろ。死んだ少女ってのは、奴隷か、それに準ずる扱い受けてたんだろ」
猫「正解。段々とわかるようになってきたね」
僕「お世辞はいらねぇ。本当の真実は、そんなことじゃないんだろ」
猫「さすがの洞察眼。そうだよ。少女は、看護師に向かって話していた」
僕「理由として、さっき言ってたような扱いを受けていたやつの死期に家族が興味を持つはずがない」
猫「本当に君はすばらしい。そろそろ時間じゃないかな」
僕「わあかってる、。ただ、そろそろ明るい話も聞きたいかな」
猫「明るい話はそのうちね」