第9話 神に嘆く
走った
走って走って、力尽きるまで走った
未来を目指して
誰もが欲したものを手に入れるために
でも、届かなかった
残酷な運命には、抗えなかった
その男は神に嘆いた
なぜ、届かないのか!と
その男は跪き、未熟な自身と運命を恨んだ
誰もいない、とても広い森の中で
その男を慰めるものは、何人たりとも許されなかった
否、許さなかった
男が、慰められることを許さなかったのだ
その男は数年後
白骨遺体として発見されたという
届かぬ終焉にて
僕「届かぬ終焉にて。か………」
猫「男が死んでしまった森の名前だね」
僕「その男は、もう既に届いていたってことか?それか、また歩を進めていたか」
猫「その真相は分からずじまいなのさ」
僕「……………嘘だな」
猫「なんでそう思うんだい?」
僕「まず第一、誰もいないところで嘆いたことをどうしてお前が知ってる?別に、答えられないようなことだったら答えなくていいさ」
猫「鋭いね。1本取られたよ。じゃあ、今回は教えてあげるよ。その男は跪いてから、一度も立ち上がっていない」
僕は「男は慰められることを許さなかった。それは、自分自身からのも含めて。ってことか」
猫「そういうこと。鋭すぎて口から唐辛子が出そうだよ」
僕「本当に出したらおもしろいけどな」
猫「ちょっと待ってて、出すから」
僕「流石に今は笑えないからやめてくれ」
猫「いくよ。ドパァ〜」
僕「ちょっ、おまっ!本当に出すなって、まっ……もう帰るからな!」