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女子小学生に甘えたい  作者: 正守証
第一章 冬
5/18

従来を見つめど前は見ず

 今回は、僕の過去について少し語ろうと思う。

 なぜ僕のような女児向けアニメオタクが全国有数の進学校に入れたのか、どうして女児向けコンテンツにハマりだしたのか。

 話は小学校──僕が健全な、それも優等生だった時期へ遡る。


 父親は有名な税理士、母親は国会議員という一流の家系に生まれた僕は、必然エリート教育をさせられていた。

 両親の生き様を間近に見て、そして憧れたからか、その教育方針に疑問を持つことはなかった。小学生のころから塾に通い中学の授業を受ける僕は、しかし馬鹿にされることはなかった。普通なら「図に乗るな」だとか、「俺たちを見下している」とか怒鳴られ嫌悪の対象になるような性格だった僕には、両親という味方がいる。

 財力、権力を駆使して人間の人生を破滅にまで追い込める僕に、反対するものなどいなかった。


 中学に進級した。授業などというものに興味はなく、僕が目標とするのは一流の高校への進学だけだった。

 授業を聞かなくとも内容は全て頭の中にある、そうやって僕は生きてきた。思い返してみれば、それは孤高な人生だったのかもしれない。

 意味がないからと友人を作らず、趣味も作らず。

 しかしそれでも、クラスメイトの態度は明らかに変わっていった。態度ではない、雰囲気とでも言うのだろうか。

 受験のプレッシャーから逃げるように、誰かのことを下に見る。そんな輩が増えていった。増えて、増えて、増えて、いつしかクラス全体は醜い動物の溜まり場となっていた。

 そんな空気に流されるように、僕もまた焦り始める。受験に合格しなければ、と。


 そうして受験が終わり、僕は無事に第一志望である全国有数の進学校──桜桃(おうとう)高校への入学を決める。

 けれども。

 けれども僕には、それから何かを成すことができなかった。「受験」という目標に焦点を絞りすぎて、肝心の「入学してから」のことを一切考えていなかった。

 何をすべきか判らなくなったのである。それまで、勉強しかしてこなかったから。

 勉強ではない、別の何かを探せと言われた。

 他の人間とは違うものを見つけろと言われ。

 心の底から好きだと言える趣味を探せ、と。

 もう、何を信じればいいのかわからなくなった。裏切らないと思っていた勉強にも。必死に努力して、果てに手に入れた答えはなく。

 頭頂から首筋を通り肩を通って上腕部、そして手の甲から──全て崩れ落ちていく。欠けていく。自身が──自信が、消えていった。


 とある日のこと、僕はゲームセンターまで足を運んでいた。

 何もかもめちゃくちゃにしてやりたい、と。元に戻らないまでに壊れたい、と。自殺にも似た、そんな心情だったように思う。

 だからこそ自分が一番醜いと感じていた、女児向けゲームに手を伸ばしたのだろう。本来の客ですらない男性がこのゲームをすることなど下劣の極みだと、そう忌み嫌っていたにも関わらず。

 ゲームを、始めたのだろう。


 ──猛烈にハマった。目の前で自分の作ったキャラクターが、自分の着せたいコーデを纏って、そして可愛く踊っている。こんなに嬉しいことはない。

 それからというものの、僕は小遣いを手に入れればゲームセンターでプリシスを遊び、いつしかプリシスのテレビシリーズを見始め、女児アニメから深夜アニメまで幅広く堪能し。

 そして、高校では明楽(あきら)という親友を見つけ。段々と、段々と世界が美しく思えて──。


「‥‥‥そっか。幸せなんだな──僕って」

 ('ω')ノ

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