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女子小学生に甘えたい  作者: 正守証
第二章 春
17/18

安穏な日常の切り抜き

 蝉の声が聞こえ始め、寝起きの首元に汗が溜まるようになる、六月の上旬。季節は夏へ移り変わろうとしていた。そんな熱いのか涼しいのかよくわからない時期に、僕は小学校に来ていた。

 里奈、七海ちゃん、そして桜の通う小学校だ。視界の先で満面の笑みを浮かべて走る女子小学生を、僕は微笑を浮かべて見守る。

 俗に言う、運動会である。

 桜の両親代わりとして、学校で配られるプリントを読んでいる僕は、三人の通う小学校で運動会が近々開催されることを知り、見にきたというわけである。

 お昼休憩のときにでも、里奈と七海ちゃんには挨拶するか。ついでに昼飯も一緒に食いたい。いや待て、昼飯を食うとなると二人の両親に会わなければならないのか。絶対ロリコンだと勘違いされる。親代わりとか言ったら絶対引かれる。グッドエンドへの難易度が高すぎるし、残念だが昼食は桜と二人で食べよう。

 

「おにーちゃーん! 里奈たち、リレーするからー! 応援しててねー!」


 と、里奈が大声で呼んできた。周りの視線が痛いからやめて。「里奈ちゃん、お兄さんなんていたっけ」「まさかあいつ、お兄ちゃんって呼ばせているのか‥‥‥ッ!?」とか小声で話してるの、聞こえてますよ。

 赤組には里奈、白組には桜と七海ちゃんがいる。個人的には白組を応援したいが、里奈に「応援してね」と言われてしまってはどっちを応援すればいいのかわからない。

 いや、むしろ応援なんて必要なのか。女子小学生が全力で頑張っているところを見るのが、観客の幸せなんじゃないのか。そうだよ、どっちも応援すればいいんだ。

 まあコミュ障なので大声で応援とかしないんですけど。小声で「みんな、がんばれー」と呟いたので許してください。

 ドン、という合図と共に、女子小学生が走り出す。

 赤組の優勢だ。スタートを切った女子小学生は、二人とも知らない少女だった。でもかわいい。

 七海ちゃんの出番が回ってきた。やる気はない、と言わんばかりに口笛を吹き、バトンを受け取っても、走りはしたが酷く遅い。

 大人たちも呆れ果てていた。何か、じわじわと胸の奥底から「お前の実力はそんなもんじゃないだろ!」みたいな熱血魂が込み上げてきて、気づけば大声を出していた。


「頑張れ七海ちゃんッ!」

「ひゃ!? ま、まことっ!?」


 どうやら気づいていなかったらしい。驚いていた。めっちゃかわいい。でも余計に遅くなった。

 次は、里奈と桜が対決する。里奈は出遅れたが、ゴール直前、お得意の足の速さで桜に追いついた。


「「んんんんんんんんんッ!」」


 必死に走る両者、結果、二人は同時にゴールした。桜の口元には、全てを出し切ったというような、清々しい笑みが浮かべられていた。

 そのあと、すぐにお昼休憩の時間になる。今日は桜に任せず、僕が弁当を作ってきた。

 と、桜と一緒に女子小学生が二人、僕の許にやってきた。クラスメイトだろう。


「桜のお父さん?」


 女子小学生が、僕を一瞥してから桜に尋ねる。


「ち、違いますっ! 私たちは同じお家に暮らしてるだけで‥‥‥あれ、そういえば、何なんですかね、誠さんって」

「そ、そりゃ、友達の妹‥‥‥だけじゃ、ないとは思うけど」


 考えてみれば、僕は桜の何なんだろう。

 友達の妹、だったらわざわざ運動会など見にこないだろう。

 ルームメイト、というのも違う気がする。ルームメイトだったらもっと馴れ馴れしいはずだ。自分で言うのもアレなんだが、僕らはどちらかと言うと初々しい雰囲気だろう。

 ネット友達、にしてはお互いを知りすぎている。第一、リアルで会っている時点でネット友達ではないのかもしれない。

 明確な答えが出ないことにがっかりしていると、女子小学生が純真無垢な笑顔を浮かべて言った。


「あっ、わかった! あれでしょ! 恋人さんなんでしょ!」

「ち、違うからぁ‥‥‥」

「恥ずかしがってる! やっぱり恋人さんなんだね!」

「違うってー! 誠さんも何か言ってくださいよー!」

「‥‥‥‥‥‥僕は別に、恋人でもいいけれど」

「な、なっ、冗談にも限度がありますよぉ‥‥‥ばかぁ‥‥‥!」

「おーい! 一緒に食べよーっ!」


 里奈が叫んできた。里奈の隣では、七海ちゃんがキャラクター弁当を勢い良く口に放り込んでいる。

 桜と一緒に、二人の許へ向かう。このあと七海ちゃんのお手製キャラクター弁当を「あーん」してもらい、頬を膨らませた桜にめちゃくちゃ弁当食べさせてもらった。

 無事、受験合格できました!

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