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女子小学生に甘えたい  作者: 正守証
第二章 春
15/18

面舵一杯の感情は吹き荒れて

 季節が流れ、五月の下旬であった。相変わらず、僕は女児向けゲームに没頭している、というよりは、明楽から言われたあの言葉が、強迫観念のように頭から離れず、それで、現実から逃げるように、前よりもなお、女児向けゲームに入れ込んでいるのかも知れなかった。

 ──お前、桜が好きなのか?

 一月ほど経ってなお、あの台詞、明楽の表情、目の前が真っ暗になっていく、その感覚が、未だ鮮明に思い出せてしまう。

 社会人になっても、帰ったら桜が料理を作って待ってくれている、みたいな妄想を、幾度も繰り返し夢見てきた。

 このままずっと、何事もなく四人で楽しく過ごせると思っていたか。四人一緒に、さながら家族のように、まるで親友のように、いかなる躊躇もなく、遠慮もなく、呑気な毎日を過ごせたら、なんてことは。

 愚考にも程度があるというものだ、馬鹿野郎め。


「こんちはーっす!」


 一人の女子小学生が、豪快に玄関の扉を開けてリビングへ滑り込んできた。

 名前を逢坂(あいざか)里奈(りな)と言い、褐色気味の肌をしたポニーテールの女の子。ノースリーブがよく似合い、無防備なため、横からだと桜色の乳首が見えてしまう。


「ただいまーっ!」「‥‥‥お、お邪魔するのだ」


 次いで桜がやってくる。桜の隣には、三人目の女子小学生が。彼女は、名前を神埼(かんざき)七海(ななみ)と言い、腰まで垂れた綺麗な黒髪と、純白と称すべき真っ白な肌が特徴の少女だ。いわゆるアニメオタクで、止まることを知らないその豊富な知識には、十年ほど年の離れた僕でさえ感心するのだった。

 座布団を敷き、寝転がるような形でアニメを見ていた僕の背中に、七海ちゃんが乗っかってくる。そして、その小さな両手で僕を抱きしめるようにし、落ち着いた体勢になったところで彼女もまたアニメを見始めるのだった。


「ほう、『旧世紀アヴィセギオン』じゃないか」

「久しぶりに見ようかと思ってね。面白い考察読んだから」

「考察を読むのもまた一興であるからな、アヴィは」

「いつも思うけど、七海ちゃんは語彙が豊富すぎるだろ‥‥‥」

「ちゃ、ちゃんはやめてくださいっ! な、なな、なのだ!」


 こういう、中二病っぽい喋り方を忘れ、本来の性格に戻る瞬間がたまらなく可愛いため、七海ちゃんを弄るのはやめられないのだった。

 僕と七海ちゃんがアニメについて語ったり、いちゃいちゃしたりしていると、唐突に桜がテレビの電源を切った。


「おいっ!?」「どうして消したのだっ!」

「‥‥‥‥‥‥テレビは禁止です」

「お兄ちゃんは里奈とも遊べーっ!」


 そう言って体当たりをしてくる里奈だが、その細く小さな身体では効果も薄く、ていうかむしろ可愛い。里奈は大笑いしていた。

 女子小学生には純粋さというか、濁ることのない聖水のような美しさがある。こんなに可愛い里奈も茜里のように成長すると思うと、本当に残念だ。

 桜はどうだろうか。成長したら、どんな女性になるのだろう。美しい容姿に色気が加わり、落ち着いた性格にも拍車が掛かりそうだ。

 しかし成長した桜は、果たして僕を見てくれるのだろうか。女子小学生に恋をする高校生を、どんな目で見るのだろう。

 ──お前、桜が好きなのか?

 桜について思念すると、脳内で再生されるその言葉が、より一層、桜と、明楽と離れることに現実味を帯びさせ、遂に僕は、言ってはならないことを言ってしまった。


「──行かないでくれ。どこにも、行かないでくれ」


 気づけば、三人の女子小学生を抱いていた。どうしてだろう、彼女たちが滲んで見える。

 言ってしまっては、どうあれ意識し始めるであろう、その言葉を、禁句と呼ぶべき、その台詞を、口にしてしまった。

 彼女たちのほうから離れることはなく、僕は醜く、赤ん坊のように、桜の胸で泣き続けていた。

 お礼をさせてください。

 一昨日から、嘘のようにアクセス数、ブックマーク数が増えていて、何だか、夢でも見ているようです。頂いたレビューのおかげだと思われます。

 趣味で小説を書き始めて、少しずつ語彙が増えていくのを実感できて、小説家になろうにて投稿する場を作らせていただいて、感想を書いてくださって、レビューまで書いてくださって、本当に、どれか一つでも欠けていたのなら、自分はなかったと実感します。本当に、ありがとうございます。

 大事なことなので二回言いますが、本当にありがとうございます。

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