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女子小学生に甘えたい  作者: 正守証
第二章 春
14/18

元の木阿弥

 受験生であるはずの僕は、しかし、まったくというほど勉強していなかった。とはいえ中学のころの勉強が未だに染みついているため、とりあえず大学受験はどうにかなりそうだ。

 茜里はこの間のプリシス騒ぎで教師に叱られ、以降、何だか受験生としての意識が芽生えたようで、プリシスに誘っても「受験生なんですけど」と断られてしまう。

 ちなみにプリシス騒ぎはゲーセンにいた客が写真などをSNSにアップロードし、それが炎上したため学校で広まり、茜里の地位は「クラスのお姫さま」から「女児向けゲームロリコンオタクと付き合っている女児向けゲーム好き」へとランクダウンした。その矛先はやはり僕へ向かい、茜里からは怒涛の言葉攻めを頂いた。

 僕としては、身近な人がプリシスをして、そして楽しんでくれるというのは、すごく嬉しいことなのだった。まあ、茜里は楽しんでいないのかもしれないけれど。


「プリヒラストアに、もぐっとプリヒラの新商品が追加されたらしいけど、桜、日曜日、一緒に行くか? 何か買ってやるぞ」

「ほんとですか!? ありがとうございます、誠さんっ! やったぁ、嬉しいです‥‥‥」


 プリヒラストアとは、名前で予想がついてしまうだろうが、ご存じプリヒラの専門店で、驚くほどの商品の数だったり、店員さんがプリヒラのコスプレをしていたり、とにかくすごく楽しい場所なのだ。

 そこに四月から始まった新番組、「もぐっとプリヒラ!?」の新商品が増えたというわけだ。商品のなかには明らかに女児向けじゃない、抱き枕カバーなんていう商品もあるのだが、年々女児向けアニメ関連商品のターゲット層が成人男性向けになっているような気がして、女児を第一に考え行動する僕としては、少々悩ましいところである。まあ、買うんですけどね。


「目浩区から電車で二十分、駅から歩いて五分で到着‥‥‥余裕だな」

「どうしましょうどうしましょう! どの服を着ていきましょう!?」


 桜はもう僕の言葉が聞こえないレベルではしゃいでいた。喜んでくれたのなら何よりだ。桜を甘やかしすぎていると明楽から注意を受けたが、しかし桜の服などを買うのは、僕が見たいという個人的な欲求も入っているため、まあ、無駄ではないと思う。ついでに明楽も誘っておこうか。


「おーい、明楽ぁ! 今週の日曜日、プリヒラストア行くんだけど、一緒に来るかー?」リビングの隅で、廃人のように某英霊召喚系ゲームをプレイする明楽に訊く。

「あ? あ、行く」


 近頃、英霊召喚して人理修復する某ソシャゲにハマった明楽は、先週辺りから学校が終わればリビングの隅で、じっと、用がなければ四六時中プレイしている。ここのところはクマもはっきりと見えるようになり、話さないためか声も掠れている。さすがにマズイと思い、僕と桜でどうにか外出させようと困っていたため、今回プリヒラストアに一緒に来るというのは、僕たち二人を安堵させてくれたのだった。

 姉さんは、日曜日は仕事だろうか。ブラック企業だからね、しょうがないね。ブラック企業だと解っているにも関わらず「新鮮で楽しい」とか言っちゃう姉さんマジ尊敬です。

 しかし、この三人との外出は久しぶりだな。今年の二月ごろに、プリシスの映画を見に行ったきりだ。


「‥‥‥うん、楽しみだな」


 自然と、そう呟いていた。



 日曜日の朝。例によって、桜が作ってくれたわかめおにぎりを食べつつプリヒラの最新話を見て、一休みしたところで準備する。さすがの明楽もソシャゲをせずにワクワクしていた。

 せっかくだし、プリヒラのパジャマのままで行こうか、なんていうアイデアも頭を過ったが、しかしやはり、電車内での目線が辛すぎるので却下。

 一方、明楽は周りの目など気にせんと言わんばかりに、絶賛耽溺中の、某ソシャゲのメインヒロイン、ア●ト●ア・●ン●ラ●ンの服を着ていた。しかもかなりえっちぃものである。冬コミで買っていたなと思い出し、思わず苦笑してしまう。桜の教育に悪いなあ。

 いやはや、こんなことを言ってしまうと、オタクの皆さまに「あの作品のメインヒロインは間●桜だぞ! クソニワカ、死ね!」だとか、「は? メインヒロインってマ●ュ・●リ●ラ●トじゃないの?」とか言われてしまいそうですが、ご安心ください、私の中のメインヒロインは永遠に遠●凛です(作者の声)。


「準備できたか?」二人に訊く。

「準備万端ですっ!」「出来たぞ‥‥‥」可愛らしい嬌声と、嗄れ声が返ってきた。

「それじゃあ、行こうか」



 電車に十分ほど揺られ、せっかくだし見に行こう、ということで、プリヒラストアの近くにあるウニコーンカンタムを見に来た。プリヒラストアの近くにあるウニコーンカンタムは、原作がいわゆるロボットアニメであり、そのロボットアニメに登場するウニコーンカンタムが、ここではそのまま等身大で展示されている。

 原作を見ていない桜ですら、そのスケールには興奮し、僕と明楽はツイッターに投稿するための写真をパシャパシャ撮っていた。実に迷惑な客だっただろう。

 数十分眺めてから、移動を始めてプリヒラストアへ。途中で今朝の残りのわかめおにぎりを食べた。桜の愛が詰まっていておいしいのじゃ~。

 プリヒラストアが見えてくると、桜が大はしゃぎで店頭まで走り出した。しかし僕らのこともきっちり考えているようで、時折振り返れば「もう! 遅いですよ、早くしてくださいなっ! 早くぅ、早くぅ!」と叫んでくる。あまりの可愛さに、ついつい頬が緩んでしまう。娘がいるお父さんって、こんな気分なんだなあ。

 店の中へ入ると、左側にプリヒラのコスプレをしたお姉さんが立っていた。店員さんだ。


「いらっしゃいませ」

「あ、はは、こんにちは」


 それにしてもよく出来ているコスプレだ、と、思わず見惚れてしまう。横から不満げに、桜が肘で突いてきた。

 気を取り直して、店内を見回す。やはり広いし、何と言っても、もう打っていないはずの商品やら、とうに放送が終わってしまったアニメのグッズやらも取り揃えてあり、心が弾むのを実感した。明楽は早速、彼の一番好きな、初代であるところの「ふたりはプリティーヒーラー!?」のコーナーへ向かっていた。

 桜に一言、「買いたいものがあれば遠慮なく言うんだぞ」と言い残し、早足で歩き出した。

 とりあえず、例の抱き枕カバーを買うか。間近で見ると、天然エロスというのか、こう、わざとじゃないんだけど肩が見えてしまって、色香が漂っているというか、何と表現すればいいものか、とにかく、ドスケベだ。女児が見てしまったら百合とか変な方向に目覚めちゃうんじゃないの、これ。


「わっ、わっ、誠さん、誠さん、ちょっと来てくださいっ、こっち、すごいですっ、すごいですっ」


 他にも客がいることを忘れているのだろう、大声で呼ばれた。周りの目線が痛い。というか、幸い女児がいないからいいんだけど、明楽の服、店員さんに怒られそうで恐い。

 桜のほうへ向かうと、桜が見ていたのは、プリヒラのコスプレグッズだった。ピンクと白が調和した、かなりの数のコスプレを目にしている僕ですら驚くような、それほどまでに完成度の高い代物だった。


「着てみたいのか?」


 桜に尋ねると、握った両手を顎に当て、目をきらきらと輝かせ、上目遣いで僕を見つめてきた。さながらアニメのキャラクターのポーズで、なおかつ桜の美しい容姿でそれをやられたというのだから、当然僕は顔を赤らめていた。

 こく、こく、と首を縦に振る姿を見て、急ぎ足で店員さんの許へ向かう。店員さんに試着を頼み、了承され、桜が試着室へ入っていった。

 五分ほどで、試着室から桜がひょっこりと顔を出した。紅く染まった頬で、はにかんだような笑いをしていた。かわいい。

 そして、ゆっくりと試着室のカーテンを開けていく。少しずつ封印が解かれていき、思わず固唾を飲みこむ。


「じゃーんっ! どうですか、どうですかっ!?」

「買うしかないな、これは‥‥‥」


 解禁されたコスプレ姿の桜を見て、そう呟いていた。

 結局桜にはコスプレグッズ、それに筆箱を買ってあげた。もう新学期が始まっていると聞いたが、しかし、勉強道具なら、まあいいかな、と。決して桜からの頼みが断れないとか、そういうのではない。うん。ちなみに僕は、抱き枕カバーを二枚と、その他グッズをけっこう買った。というか、かなり買った。


「明楽。そろそろ帰るぞ」


 まだ店内に残っている明楽に告げて、店頭で待つ桜の許へ向かおうとした、そのとき。

 明楽に肩を掴まれた。振り向くと、小さめの声で、明楽は言った。


「──お前、桜が好きなのか?」


 いつもの日々に、永遠を感じ始めていた、四月の上旬、唐突に放たれたその言葉に、心臓が、どくんと跳ねた。

 明けましておめでとうございます。

 いやはや、ネタがありません。自分で小説とか読んでいるとき、あとがきなどで「ネタがない」とか書かれていると、「は? まだまだこうすればええやんけ! この作者アホやなあ」などと、一丁前に上から目線で思ったりしますが、しかし、彼ら彼女らの気持ちがよくわかるようになりました。成長なんですかねえ、これは。

 とはいえ、あと何話かくらいはネタがありますので、待ってくだされば幸いです。とにかく完結できるように頑張りたい!

 今回のフェ●トネタ、自分でも苦笑するほどに「●」が多く、知らないひとは取り残されてしまうし、何だか色々と悩むところですが、フ●イトはいまがすごく熱いので、まだ詳しくない方々も、ぜひ。


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