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七星物語  作者: あまとう
第1章 星の邂逅
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双剣士と魔道士

 再び、港の戦いに戻る。


勢い任せで3人を気絶させたロイだったが、残り3人同時に相手取るとなると、ジリ貧になることは分かっていた。


(何か、何か状況を打開する一手があれば……)


海賊達は考える暇を与えてはくれない。


「ちっ!すばしっこいガキだ!!」


流石は仲間同士、少し冷静になり、連携を取るようになれば、ロイの双剣でいなしきるのは至難の技だ。

まだ攻撃が単調なため、予測して動くことで対応出来ているが、それももう長くはもたない。


(ふーっ……さーて、どうするか……)


一度距離を取り、ロイは警戒の構えを解く。


「なぁ、あんた達、慣れた手つきでこの町を襲ってたけど、今日で一体何回目なんだ?」


時間稼ぎ。ロイ自身もこの戦いに必ずしも勝つ必要はないと分かっていた。


(ギルが上手くみんなを避難させてくれていれば、騒ぎを聞きつけた自警団が増援に来てくれる。

そうなれば、数的有利はこちらが取れる。

それまで時間を稼ぐんだ)


「あぁ!?何だ急に……数なんて覚えちゃいねぇよ」


「この町は俺たちの倉庫みたいなもんだ。俺たちが欲しいと思ったら、必要なもんを奪いに来る。それだけだ」


「はぁ……とんだ悪党だな……まったく……」


聞いているだけで嫌気がさす。

この海賊達も初めはもしかしたら、困窮から抜け出す為の手段がそれしかないと思ったのかもしれない。

だが、それは言い訳にしかならない。


どんなに苦しくたって、人を脅かすことなく、強く耐え忍んでいる人も沢山いる。

ロイは今回の視察に限らず、そんな領民達を何度も見てきた。


そして、その度に自分の力の矮小さに震えていた。

人ひとりに出来ることは限られる。

ましてや、ただ貴族の息子として生まれただけの力も持たないクソガキには目の前の人に何をしてやれると言うのだろう。


だからこそ、今立ち向かっているのだ。

これが今の自分にできる数少ないことのひとつでおるから。


「おしゃべりで時間を稼ごうってつもりだろうが、そうはいかねぇ。

そろそろ自警団に話が通っちまってるだろうからな、さっさとお前を始末して、とんずらといくぜ」


(まずいな……まだ時間が足りない。このままじゃ……)




その時


声が聞こえた。



「大地の精よ、いななき、生命の芽吹き、緑生の民らに漲り、仇なす彼の者に縄張る樹縛をもたらせ!!



ーーアイビー・バンテージ!!!ーー」


詠唱と共に海賊の1人の足元から突如太い蔦が生え、その脚を絡めとった。


「な、なんだこりゃあ!!!」


そのまま蔦は海賊の身体中に伸び、身動きが取れなくなっていた。


「ほぅ……魔法か……随分とおもしれぇもん使うじゃねぇか、クソガキ……」


今回の親玉と思しき海賊が、ロイの方を睨む。

しかし、見ているのはロイではなくその向こう。


ロイの背後に駆けつけた、ギルだった。


「ギル!?なんで戻ってきたんだ!?」


ロイは振り向き、驚く。

それが隙になり、親玉はそれを見逃さなかった。


一気に駆け寄り、ロイに向かって大きくカットラスを振りかぶる。


「しまった……!!!」


ロイも気付くが、一足遅い。海賊の剣戟がロイの身体を一閃しようかとその瞬間にーー


「ーーエアロバースト!!!!ーー」


ロイの後ろにいたギルの指先から、物凄い突風がロイを避けながら、海賊に吹き付ける。


「くっ……」


海賊は大きく宙を舞い、5メートルほど先に突き落とされた。


「おい!大丈夫か!!?」


突如吹き飛ばされた親玉にたじろぐ海賊。


今度はロイが隙を見逃さなかった。


「敵前で隙は見せちゃいけねぇ……よな!!!!」


自分を戒めるように、勢いよくも正確に海賊の剣を振り払い、得物を弾き飛ばす。


すかさず、膝蹴りを加え、下がった頭の首筋に衝撃を与えて気絶させる。


それにより、一先ずその場の脅威を払い、一息をつく。


「ふーっ……さてと、まずはありがとな、ギル。

お前が来てくれなかったら、ちょっとヤバかった」


「いえ、それは……」


「だけど、どうして戻ってきたんだ?

俺は避難を終えたら逃げろって言ったと思ったんだが」


「ここで逃げたら、この旅の意味が失われてしまう気がして……」


「旅の意味……。修行の旅……か」


「はい。師匠、お爺ちゃんはきっと、人を助けるために魔法を使える、そんな魔道士になって欲しくて僕を旅に出させたんだと思う……んだ。

だから、町の人達を助けるために立ち向かったロイを見て、自分もみんなを助けるために出来ることを考えたんだ……」


「……そっか。実際、助かったしな。

避難誘導もしてくれて、こっちまで助けてくれて……ってそうだよ!!魔法!!!凄かったな!!!」


「あ、ありがとう……。実戦では初めてだったし、上手く出来るか少し不安だったけど……」


「全然、バッチリだったよ!!魔法か……俺も覚えられたら、戦いでも有利になれたりするかな……?」


「うん、自分の身体能力を高める魔法とかもあるし、ロイの戦い方ならそういう補助魔法を覚えると良いんじゃないかな」


「よっし、決めた!!ギル!!これから一緒に旅しないか?目的は同じ修行なんだし、お互いに色々学ぶこともあると思うんだよ」


「い、一緒に!!?た、たしかに、今回ロイに勇気づけられて僕も一歩を踏み出せた訳だし……。

うん、一緒に行こう。どうせ目的地だって決まってない旅だからね、ロイに付き合うよ」


「そうと決まれば色々準備しないとな……ってとりあえずは後始末か。気絶してる連中も縛っておかないと危ないし……」


「ロイ!!!後ろ!!!!」


ギルの声を聞くや否や全てを察して、ロイは間一髪で剣戟を躱す。


「ちっ!!!避けられたか」


先程吹き飛ばしたはずの海賊の親玉だった。

随分と遠くに飛んでいっていたはずだが、2人はこの距離まで気付かなかった。


「あっ………ぶない……。ギルが気づかなかったら、終わってたぜ……。それにしても、いくら油断してたからってこの距離まで近づかれて気付かないなんてあり得ない……どういう仕掛けだ……?」


「風の揺れで気づけたんです。あれはおそらく……」


「魔法を使えるのはお前らだけじゃあねぇってことさ。海賊だから、学が無だとでも思ったか?」


「サイレント。周囲の空気を操って、姿や物音を隠す魔法です」


「その通り。流石は魔道士様だな。ま、こんなもんは一度きりの手品みたいなもんだが、他に使える魔法はまだある。これで、条件は同じだ」


数的有利はこちらにあるが、実力でいえばロイよりも実戦慣れしている親玉相手では条件が同じなら部が悪い。ロイはそう考えていた。そして、ギルもそれは同じだった。


(これは……ちょっと厳しいか……?)




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