灯る炎(ゆうき)。
ロイの言う通り、町民達の避難を誘導し、ギルは町を見回りながら、残っている人がいないか確認していた。
(そろそろ、みんな避難できたみたいだ……)
ロイはギルに逃げろと言っていた。
しかし、同時に修行とも言っていた。
これは修行……になるのだろうか。
ギルは悩んでいた、というよりまだ怖かった。
魔法は人を傷つけるためにあるものではない。
だからそれを人に向けて放つ事を恐れていた。
魔法の強大さを理解しているからこそだ。
(でも、魔法は人を助けるために使うもの……)
悪い連中を追い払うため、捕まえるために自分の魔法がどう活かせるのか、それをギルはじっくりと考え、そして考えがまとまった。
「よし、行こう!」
自分も成長したい。
ただ、旅をするだけでは本当の今で修行にはならない。
自分に旅をするよう命じた師匠ーー祖父もこの旅を通じてそれをギルに学んで欲しいと思っていたのではないだろうか?
あくまで傷つけるためではなく、動きを封じる。
捕らえて、自警団が駆けつけるまでの時間を稼ぐ。
その目的を明確にしたことで、ギルの中から恐怖は無くなっていた。
そして、勇気が灯っていた。
ロイが戦っている港へ、ギルは走り出した。