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ふたごっち

作者: 立花泉

 ぼくの家には、お化けが出ます。でも、

 お父さんもお母さんも、たまに来るおばあちゃんも、信じてくれません。

 みんなには、見えないのです。

 ぼくはお化けのことを「かげくん」と呼びます。

 太陽の下に出たときにできるカゲと同じ、真っ黒だからです。

 かげくんは台所にいたり、ぼくの部屋にいたり、家の中どこにでもあらわれます。

 ときには、お母さんに甘えるように寄り添ったりします。

 もう、ずっとずっと前からいます。

 みんなに話すと怖がります。

 かげくんは怖くないのに。

 悪いお化けじゃありません。

 ぼくには分かるのです。


「お名前、何ていうの?」

 おばあちゃんです。

 ぼくに会うと、かならずいろいろと聞いてきます。

「かわもとなおき、です」

「そう。おいくつ?」

「よっつ」

 ぼくは元気よく返事しました。

 おばあちゃんは嬉しそうです。

「あの子が生きていたら、二人そろって幼稚園に行けたのにねぇ」

「あの子って、誰?」

 ぼくが聞くと、お母さんの声が高くなりました。

「やめてください!」

 いつも優しい声なのに、ぼくは怒られているのかな?

「直樹の双子の弟よ。直哉っていうの。生まれて少しして死んでしまったのよ」

「お母さん!!」

 なおや・・・・。ぼくの、弟?

 ぼくは首をかしげました。

 おばあちゃんの横に、かげくんがいました。

 ぼくを見ている気がしました。

 かげくんは、今度はお母さんの側に行きました。

 いつもの優しい顔じゃないお母さんに、甘えるように寄り添いました。

「直樹。おばあちゃんに、幼稚園のかばんを見せてあげて」

 ぼくは二階に行きました。

 お母さんが気になりました。

 なおやのことも気になりました。

 黄色いかばんをとって階段を下りようとしたら、

お母さんとおばあちゃんの声が聞こえました。

 いつもは怒らないお母さんが怒っていました。

 いつも優しいおばあちゃんの声が、冷たく感じました。


 さかさまになったのは、このときです。


 気がつくと、ぼくは階段の下にいました。

 誰かに支えられていました。かげくんでした。

「ありがとう。なおや」

 ぼくはそう言っていました。

 すると、かげくんはぼくと同じ顔をした男の子へとかわりました。

 なおやは嬉しそうに笑っています。

 お母さんとおばあちゃんが走ってきて、かわるがわるぼくを抱きしめたのは、

すぐこの後でした。


 それからです。

 かげくんの姿が見えなくなったのは。

 どうして見えなくなったのか、ぼくには分かりません。

 でも、いつも側にいます。

 だって、ぼくたちはふたごで、ここはお家だからです。

 

 

 




 

 

 

 

  


 

 

最後まで読んでいただき、有難うございました。これは約10年前に書いたものです。投稿したくなったので、手直しはほとんどしないまま載せました。ただの自己満足です。

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― 新着の感想 ―
[一言] すみません。 分からない部分があるので教えて下さい。 ”さかさまになったのは、このときです”っていうのは、階段から落ちて逆さまになったという事ですか? それとも、自分とかげくんが入れ替わって…
[一言] タイトルと最初の一行で展開が大体掴めてしまいました。読者が驚くような展開にしてもいいんじゃないですか?
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