第7話 迷宮主の進化って進化論に当てはまるのか?
「進化」ってなんやねん、という気分だ。類人猿が人間になる、みたいなことか? ってことは俺、今類人猿みたいなもんなのか?
「カヨちゃん、進化ってなに?」
《個体が変化し、生態が多様になることです》
「それ言葉の意味だよ……。でも進化って魔法なんだよな?」
《迷宮魔法の1つで、一定のMPになると使用できるようになります》
一定のMPになると使用できる……というのは他の迷宮魔法も同じだ。緊急避難なんかもMP5万を超えたところで使えるようになるみたいだし。
他にもいくつか魔法を使えるようになったけど、俺はどうしても「進化」が気になった。だって「進化」だぜ。俺なにになっちゃうの?
《迷宮主が中級迷宮主になります》
……え?
「今なんて?」
《進化することで迷宮主は中級迷宮主になります》
「中級迷宮主ってなに?」
《…………》
返答ないのかよ!
あ、そうか。今はただの迷宮主だから、中級に上がったときの情報がないってことか……? やっぱりカヨちゃんは迷宮主という生物が持っている機能なんだな。
いやでも進化先が中級だってことはわかるのか。ままならぬ機能だな。
気になる。進化気になる。
「ちなみに進化の魔法を使うのに必要なMPは?」
《50万です》
進化ってすごい。
結局、俺は1時間くらい迷った。迷っている間はジイさんのことを思い出さずに済むので悲しい気分が紛れてよかった。まあ、ジイさんには感謝を捧げよう(主に女神の名前がわかった点について)。天国で奥さんと仲良くしてろよ? いつか俺も死んで天国に行っても、ジイさんが巨乳エルフに興奮して死んだことは奥さんに黙っててやるから。
「よし、それじゃ進化しよう!」
俺は心に念じる――『進化』、と。
そうして俺の意識は暗闇に落ちた。
・ ・ ・・・・ ・
・ ・・
・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・
「………………ん」
目が覚めた。
一瞬、なにがなんだかわからなくなる。俺なにしてんだっけ? あれ、仕事は? とか思ったりしてな。ちなみにこの確認、毎日やってる。長年染みついた社畜としての生き様はなかなか変えられない。
「あ……進化したんだっけ」
手を見る。足を見る。顔――は鏡がないから見られないな。
「変わってねえ。なんも変わってねえ。カヨちゃん、俺は誰だ?」
《あなたは中級迷宮主です》
お、成長しているらしい。
つうかめっちゃお腹空いてる。こいよ、空腹無視!
……うん、空腹感なくなった。でも相変わらず寂しい。唐揚げ食いてえなあ……。
「で、俺はどれくらい気を失っていたの?」
《…………》
答えてくれないと思ってたけどね。大体俺の意識がないのに、俺の機能であるカヨちゃんが覚醒してたら変だもんな。
「中級迷宮主になって今までと違うことは?」
《新たな迷宮魔法を取得しました。『召喚知性スライム』、『召喚知性ゴブリン』、『召喚知性ホブゴブリン』、『召喚知性スケルトン』、『製造精霊』、『中級整形』です》
お、おお……なんか変わったヤツらがでてきたな。
実はすでに召喚スケルトンとかは取得していたんだけど、どうせアレでしょ、俺を襲ってくるんでしょ? 知性を付与できませんってカヨちゃんに言われるヤツでしょ? ってわかりきっていたので使ってない。
「召喚の魔法は、知性って言葉がつくとなにが変わるんだ?」
《言語が通じ、意思の疎通が可能です。また、迷宮主の命令に従います》
それ! それだよ欲しかったの! っていうか最初からそうしてくれよ、召喚したら俺に襲いかかってくるコウモリとか欠陥魔法もいいところだろ!
とりあえずだな、試すのは後にして……全部詳細を聞いておこう。
「製造精霊ってなに?」
《紡績、冶金、裁縫、トラップ製造などを行う精霊使役が可能となる魔法です。使役の難易度、規模によって消費魔力が変わります》
「…………」
え?
「…………服とか作れる?」
《素材があれば可能です》
きたああああああああ!
卒業! みすぼらしい見た目卒業!
これで恥じることなく人に会える! 会う人いないけども! 外にも出られないけども!
空間精製で迷宮を作りつつ、空間分解で素材を集める。そして製造精霊で服や装備を作る、か。
ふうむ。
でもアレだよな、木綿とか土中にないよな……蚕もいないよな……どうやって素材集めるんだ。
まあいい。
後々考えよう。とりあえず俺にはぼろきれがあるし。
それに気になるのは「トラップ製造」なんだが……。
トラップったってアレだよな。害獣である鹿を捕まえて自給自足生活とかそういうアレじゃないんだろ? 迷宮の侵入者を……*いしのなかにいる*……みたいなヤツだよな?
《はい》
肯定すんのかよ。知ってんのかよ。いいよな、ウィザード●ィ。
ともかくも、これで俺の生活は一変することになりそうだ。
前回長かった反動ってわけでもないんですが、短くてすみません。