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第二章 其の四

 少し行くとターラが出入りしている岩山の洞窟に行き着いた。何人かのターラが挨拶する中、魔王は馬を降りてハナが降りるのも手伝ってくれた。

 洞窟の中にも何人かのターラがいて岩壁を掘っていた。高いところは巨人が、低いところは小さいターラが掘っており、中には岩崩れ防止のための木の柵が作られていた。

 「前に来たときよりだいぶ掘り進みましたね」

 馬を下りながらカルストルが言った。

「そうだな。あんまり深くすると崩れてきてもいけないから、そろそろ工夫が必要かもしれないんだが、技術者はまだ見つからないか」

「そうですね。ダルディンあたり出身の専門家を探させていますが、まだ何も情報はありません。わかったらすぐお知らせしますが、報酬はどのぐらい払えますか」

「どのぐらい必要なのか」

「それも調べています。あとで、幾つかお話しします。ところで、あの話は考えていただけましたか」

「ああ、それか」

 魔王は少し顔を曇らせた。

「悪い話ではないと思いますよ。鉱石のまま取り引きするより、鉄の形で、さらに言えば鉄製品の形で売る方が断然利益が大きいですから」

「しかし、俺の聞いた話では、鉄の精製には大量の木を切らないといけないそうだ。ゲラルデュインでは森が丸裸になったことが羽人はねびととの争いの原因だったそうじゃないか」

「ええ、でも、ここはこれだけ森が深いですから。まだまだ東の方にも森が続いているんでしょう? ゲラルデュインとは規模が違いますよ」 

「もう少し考えさせてくれ」

 魔王が奥に行ってターラと話している間、ハナはカルストルに聞いてみた。

「さっき鉄の精製って言ってましたよね。これが鉄鉱石なんですか?」

「うん。ここは黄鉄鉱だけど、エルシノアで採れる磁鉄鉱もあってね。かなり質のいい鉄が採れることがわかったんだ。魔王様に、もっと効率のいい売り方を勧めてるんだけど、なかなか承知してくれない。あの人にとっては森の方が金より大切らしい」

 カルストルは少し皮肉な口調で言ったが、ハナはそういうところ、なんとなく、魔王らしい、と思った。なにげなく洞窟の中を見回していたハナは、暗い隅の方で動いている何かに気がついた。初めはターラかと思ったが、動きが違う。

「え? 小人?」

「小人?」

 魔王が聞きとがめて振り向いた。でも、その時にはもう小人らしい人影は消えていた。

「ごめんなさい。気のせいかも。岩小人さんがいるって聞いたものですから」

「ハナには見えたの? どんな風だった?」

 カルストルは疑っているのかもしれない。

「ええと、背はこのぐらいで、姿はよく見えなかったんですけど、ターラより小さいなと思って」

 ハナは手で地面から六、七十センチのあたりを示しながら答えた。魔王はしばらく考えて言った。

「岩小人の姿は俺も見たことがない。ハナが見たのは本当に岩小人だったのか」

「えっ? ないんですか? でも、ここは岩小人が住んでたところだって」

「そう。声は聞こえる。俺には岩そのものの姿にしか見えない」

「あたしは声は聞こえてないです。やっぱり気のせいなのかなあ」

 もしかして、ロディアには見えたのかと尋ねてみたけど彼女にも見えたことはないらしい。

 魔王とカルストルが仕事の話をしている間、ハナは作業中のターラと話したり下に落ちている鉱石のかけらを拾ってみたりした。

「きらきらしてる。金みたいですねえ」

 監督をしているらしい一本角のターラが微笑みながら答えた。

「金と間違える人は大勢いますよ。硫黄を含んでるんだそうです。これ、火打ち石になるんですよ」

「えっ? 火打ち石?」

 ハナは興味を持って、二つ小さいかけらを拾って打ち合わせてみたが火花は出なかった。

「火打ち石というのは石を鉄で叩かなければだめなんです。こうです」

 ターラが道具に使っている金槌を取って石を叩くとカチッと火花が走った。

「うわあ。すごい」

「よかったらお持ちになりますか?」

「いいんですか?」

「もちろんです。魔王様と王妃様の物ですから」

「ありがとうございます!」

 なんか面白そうな物をもらった。ハナが石を光に当てたりして輝きを楽しんでいると、また、ちらり、と小人の姿が見えた気がした。けれど、そちらに目をやるとやはり誰もいない。気のせいなのか。 



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読んでくださってありがとうございます。



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