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僕らの冒険3  作者: じっつぁま
聖魔法
4/10

4話



「ふむふむ、皮膚とは表皮と真皮からなり、その下に皮下組織があるんだな。そして表皮は角質層などの5層に分かれると」


現在は早朝、ジュンイチは日課の鍛練を終え、人体解剖の勉強中である。骨の次は筋肉なのであるが、しばらく骨折患者などは見ないだろう。それよりも皮膚の構造を理解した方が、実地の訓練に役立ちそうなので、飛ばして読んでいるのであった。


「あのふにふにしているのが表皮で、つるつるしているのが真皮だな。そしてぶにぶにしているのが皮下組織に違いない」


人が聞けばなんのこっちゃと突っ込まれそうな独り言を呟くジュンイチであった。


「それで血管が、こう生えてきていると」


決して生えているわけではないが、皮膚の構造を頭にイメージするジュンイチであった。


「よーし、これでもう少し傷を綺麗に出来そうだ」


もはや目的がちょっと変わって来ているのに気がつかないジュンイチであった。ただ、大筋は間違ってはいないのだ。朝食に呼ばれ、本をたたむジュンイチであった。



*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*



「じゃあ、ジュンイチ君、今日も頼むよ」


「はい、キズヨー、ナオレー」


今日も王都のギルドに来ている。待っていてくれた様で、軽傷患者が数人いた。早速傷洗浄を行うジュンイチであった。


傷に手を当て、水を流す。傷周囲の泥をまず流し、次に傷の中の泥を流していく。綺麗にしていく途中で、止まっていた出血がまた流れ出すのが見えてくる。血液も水を含んでいる。ジュンイチは流れ出す血液をその場に留めるようにすることで、止血をしながら傷洗浄を行う事にした。


一つ一つの泥を丁寧に取り除き、充分綺麗な傷になった後、救護員さんに任せた。そして次の患者に取りかかる。次の患者は膝の裂傷患者だ。少し深そうだが、血は止まっている。同じ様に周囲の洗浄から始め、続いて傷の中の泥を取り出していく。


さっきの患者より多くの出血が始まったが、同じ様に血液をその場で留めるようにすれば自然と出血は治まった。ジュンイチは止血のスキルを覚えた!


まあそんな高尚な技ではないが、自己の止血能力に任せるやり方を、ジュンイチ的なアレンジをしているだけであった。傷が満足できる位綺麗になった後、今度は少し傷を寄せておいて救護員さんに任せた。


今日は5人の患者を見せて貰った。そして救護員さんに労いの言葉を貰うのであった。


「ジュンイチ君、何か少しずつ傷の処置が上手くなって来てるよね。もう聖魔法と言っていいくらいだよ」


「いやいやいやいや、それは言い過ぎですよ。まだまだ水魔法使っているだけです・・・ところで救護員さんて、お名前なんていうんですか?」


今頃聞くのかよ、というタイミングで、ジュンイチは名前を尋ねた。


「あっ、いってなかったかな?エミーだよ」


「エミーさんですか?」


「エミーでいいよ。僕の事は敬称抜きで呼んでくれ」


どうも僕っ娘だったようだ。ショートカットで服装が白衣であったので、女性と気づかなかったジュンイチは、少しまじまじと見てしまった。


「女らしくないだろう?」


「いえいえいえいえ、決してそんな事は!」


「いや無理しなくともいいんだ。言い方がこんなだし、よく間違われるんだよ」


「いえいえ、とても女性らしいですよ?仕種とか」


さっきまで男と思っていたことをひたすら弁明するように、ジュンイチは言い繕った。


「まあ、懲りずに来てくれたら嬉しいよ」


「はい、また明日もお願いします」


若干照れながら、その場を離れるジュンイチであった。



*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*



「ステファン王子、交代の時間ですよ」


「あっ、エルフのオリンさん。もうそんな時間ですか?」


「・・・ステファン王子、顔色が悪いですよ。お疲れなんじゃないですか?」


「いえ、そんな事はないです」


「いや、隈もできてますし、少し休息が必要です」


「私もそう思います」


ステファンと交代にやって来たエルフが、ステファンの身を案じていると、そこへバンダルもやってきて、そう告げた。


「しばらく休息を取るべきです。ブラウニー城の中の仕事も増えているのでしょう。少し落ち着くまでは私が変わりますので、しばらくはブラウニー城の仕事だけに専念してください」


「・・・分かりました、お願いします。また落ち着きました参りますので、その時は監視をさせて下さい」


「・・・分かりました。充分休息を取って下さいね?」


そうしてステファン王子は、ブラウニー城へ帰っていった。


「彼は洗脳されかけているような顔付きですね」


「そうなのですか?」


「我々エルフの聖霊魔法の中に、魅了の魔法がありますが、懸けられた相手の顔付きがあの様な感じなのです」


「・・・そうなんですか」


心配そうな顔でステファン王子を見送る2人であった。



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