表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕らの冒険3  作者: じっつぁま
聖魔法
3/10

3話



「おう、ジュンイチ、ちょっと顔貸せや」


放課後となり、さっさとギルドへ行こうと思っていたジュンイチは、久しぶりにDQN応援団に絡まれた。


「おう、ワタル君がそう言うんじゃけーさっさと来いや」


「そうじゃそうじゃ」


「えー、どうしたの?」


「うむ、ジュンイチの応援団必須ノートにも書いてなかったんだが、綾波様の心を揺さぶる応援をだな、したくなってな?」


「うんうん、それで?」


「いや、どうしたもんかと思って話しかけたんだ」


えっ、内容が伝わって来ないんだけど等と心の中で思いながら、


「あー、ワタル君はどうしたいの?」


「いや、こう、ぐわっとした感じで、それでいて心を揺さぶる応援をしたいなと思ってるんだが」


ぐわっとした感じってどんな感じ?と思いながら、


「あー、取り敢えず3人の人数ではぐわっとした感じは出しにくいんじゃない?まずは応援団の人数を増やして見たら?」


「それじゃあ綾波グループが増えるじゃんか」


「そうじゃそうじゃ」


「おー、そうだな。ジュンイチの言うとおり増やせばぐわっとした感じが出せそうだ」


「えっ、増やすの?ワタル君?」


「そうした方がいいだろう?」


「そ、そうだね、ワタル君」


「そ、そうだそうだ」


適当に出した案を真剣に話し合う3人を放置して、すすすと消えるジュンイチであった・・・



*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*



「最近ステファン王子が見張りをした次の日の結界が、少しおかしいようですが」


報告がバンダルに上がって来た。


「おかしいとはどんな風にですか?」


「どうも封印の門の鍵が外れかかっていたり、結界の石に小さな傷が着いていたりするそうです」


「・・・報告者は誰ですか」


「ステファン王子の次の日を担当するエルフです」


「まずはその方のお話を聞いて見ましょうか?」


そう言うとバンダルは、魔王城の執事にエルフの勇者を呼んで貰う事にしたのであった。



*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*



「キズヨー、ナオレー」


ぷっしゃー


「おお、ジュンイチ君、ありがとう」


ここは王都のギルドである。今は夕方。ジュンイチはDQN応援団を振り切って、ガイア王都のギルド内、救護室へやって来て、怪我人の治療をしているところである。


まず比較的浅い怪我、ダンジョンの入り口で滑ったという擦過傷の患者を紹介された。今彼の膝の傷に手を当て、水魔法を使ったところである。


「それではこちらに来て」


ギルドの救護員は、ジュンイチが水魔法を施行した負傷者を呼ぶと、傷口にポーションを振りかけた。


「ジュンイチ君のお陰で傷口が綺麗になるので、ポーションが少なくて済むよ」


そう、ジュンイチは傷口の洗浄をしているのであった。決して聖魔法を使えている訳ではない。最初の患者の時は加減を間違えて、辺りを水浸しにしてしまった。今は適量の水分を産み出し、傷周囲の泥などを除去している。


傷の洗浄は重要である。最近は現世の医学でも消毒よりは洗浄が重要と言われている。ジュンイチが行っている傷洗浄は間違った行為ではない。のであるが、


「うーん、さっぱり分からない」


水魔法を聖魔法に変換する術が、全くつかめないジュンイチであった。


「ご苦労さん、ジュンイチ君。今日はもう患者はいない様だ。帰ってもいいよ」


「お疲れ様でした。明日もいいですか?」


「もちろん、お願いするよ。こんなに傷を綺麗にしてくれるとポーションの使用する量が少なくてすむんだ。浮いたポーション代はジュンイチの給料にしてあげるね?」


「いやいや、それは・・・」


「貰ってもらわないと、僕がソフィア様に怒られてしまうよ」


「いやいや」


「いやいや」


2度3度のやり取りをした後、結局半額を受け取ることにしたジュンイチであった。


そして、次の日からも、


「キズヨー、ナオレー」


傷洗浄を行うジュンイチであった。

毎日2・3人の創傷患者を見させて貰うジュンイチであった。

色々な工夫を凝らしてみた。傷の治癒に心を集中させてみたり、詠唱のイントネーションを変えてみたり、魔法を出す自分の姿勢を変えてみたりしたが、全く無意味であった。


「キズヨー、ナオレー」


今度は、傷の泥に注目してみた。少し開き直り、どうせ洗浄するならばもっと綺麗にしてやろうと思ったのだ。傷口に入り込んでいる泥はなかなか取れない。強めの水魔法では痛みも増すし、傷を深くしてしまうこともある。正常の組織と汚染物質を分離させるのだ。


これが思った以上に難しい。小さな砂等は簡単に除去出来るのだが、潜り込んだ泥は組織に沈着してしまい、簡単には落ちないのだ。しかし聖魔法を使うよりも、ジュンイチには落とせる自信があった。下水道やトイレ掃除で培った職人根性の様なものである。


「キズヨー、ナオレー」


もはや詠唱は口癖のような物であった。今ジュンイチの頭には泥を分離することしかなかった。


「キズヨー、ナオレー」


そして、徐々に徐々に、ジュンイチが洗浄した傷は、汚染が少なくなるのであった・・・



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ