新たなる刺客
あっと言う間に時が過ぎ、剣術大会の前日になった。アガルダの首都ヤオの巨大な湊公園。森が生い茂るこの湊公園は、剣術大会の会場だ。
時は早朝6時くらい
白い垂れ幕に、剣術大会開催と書いてある。巨大な円形の舞台が試合の場所。
それを取り囲む様に、無数の観客席がある。
円形の舞台に、虹色に輝く人影があった。その人影がどんどん人の姿になってゆく。
まだ あどけない顔の少年だった。ブロンドの綺麗に切り揃えられた髪。 春の日の空を思わせる明るい水色の瞳を眩しそうに細めている。
紫色のマントを強い春の風になびかせていた。
少年は無言で、春の嵐に震える空を見上げた。空と同じ色の美しい瞳。朝日が金色の髪を暖かく照らした。まるでその姿は神の祝福を受けた、天使のようだ。
「ふうん・・なかなかの美少年じゃない」 甘ったるい声が、空から聴こえてくる。上空に白い髪の少女が浮かんでいた。 セレーネ・ヴァイスだ。今日の服装は黒い水着の様な服、白い美しい足には艶かしい網タイツを履いている。金色の不思議な形の杖を持っていた。 「どう? 私の下僕にならない?」 セレーネがお決まりの言葉を、金髪の少年にかけた。そして・・可愛くウインクして 魅力を振りまいた。
だか・・少年は「僕に話しかけるな・・小賢しい白いハエめ・・」 クールに言い放った。・・ 「小賢しい白いハエですってえ・・なんで皆私のこと生き物に例えるのよ」 プンスカ、セレーネは怒った。
「お前のような雑魚には用はない、僕が用があるのは・・リカード・クレッチマンだ。奴はこの大会に出るようだな・・エントリー紙に奴の名前が、書いてあった」
「雑魚-?可愛い顔してるから言わせておけばー・・リカード・クレッチマン? あんたこそ何者よ?」
「僕はエルンスト・ホワイト・・聖ズイルバーン帝国からやって来た。リカードとその仲間、邪悪なる野獣ミロクを殺しに来た」 「野獣ミロク・・もしかして・・アステルの事?・面白いことになりそうねえ・・くすくす」 「私は汗臭い男たちと戦うのは性に合わないわ・・高みの見物をさせてもらうとするわ・・じゃあね」
そう言うと、セレーネは風に消えた。・・ エルンストが、空を睨んだ。
赤子のように透明な瞳が、無邪気のようにも冷酷のようにも見えた。
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