鈍い男
一行は、フウマの侍屋敷を訪れた。フブキが兄の住居を知っており、5日間剣術大会の間まで泊めてもらうことになっていた。
フウマの侍屋敷は、なるほどフウマが言っていた様にさほど広くない。 でもどこか、趣がある屋敷と言うか住居だ。小さいながらも、日本庭園風の庭があり、小さな池には錦鯉の様な赤や水色、色とりどりの魚が泳いでいる。屋敷の中は簡素な作りで、畳の部屋・・派手な赤と黒のふすま、屏風、積み上げられた古い書物等が無造作に置いてある。
もちろんテレビも、パソコンなんてない・・日本の昔話に出てくるような屋敷だ。
でも、なんと写真集らしき物・・古い書物の中に置いてあった。 タイトルは、水着小町ドキ!。確かに水着姿の可憐な娘達がポーズを取っている。 昴がしげしげとそれを見ていると、アガルダのぐらびああいどるでござると、フウマはガハハハと笑った。
もう辺りは暗く、夕方になっていた。 フウマは夕飯の支度をするといい、台所に消えていった。
他の皆はワイワイ今日の事を話していた。デトレフはその輪に入らず、屋敷にある書物を読んでいた。・・ようだがアガルダ語はちんぷんかんぷんだった。
デトレフが静かに本を読んでいるのに、気づきフブキが声をかけた。
「デトレフ殿・・何を読んでいるのでごじゃるか?」
「まあ・アガルダの書物をね・・とても暇だから」
「えっなんだい?」
二人は、違う部屋に移った。
「話てっなんだい」
デトレフがメガネを吹きながら言った。 メガネを取ったデトレフは本当に優しげで頼りなさそうに見えた。 そして、とても幼く見えた。 本当はとても綺麗なコバルトブルーの瞳をメガネで隠している。
フブキは、そう思った。 「デトレフ殿、質問があるでござるよ せっしゃがアステルの立場・・だったら
デトレフ殿はどうするでごじゃるか?」
「えっ・・それって・・どーゆうー」
「もし、せっしゃに心を寄せてくれる人がいたとして、その人がせっしゃに熱烈に求婚したとしたらデトレフ殿はどうするでごじゃるか?」
「なんで僕にそんな事を聞くんだ?・・」 「せっしゃは・・その・・デトレフ殿の事を・・ええい! デトレフ殿は鈍いでござるなあ・・もういいでごじゃる!」
フスマを開けピシャリとを閉めるとフブキは怒った様に、廊下をドカドカとあるき行ってしまった。 「・・・なんだよ・・あいつ」 一人部屋にデトレフは取り残された。
もう一言言いたい事があったのに・・。
「もちろん、その求婚者と戦うさ」と。
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