誘拐事件
夜中の人形騒ぎは おさまり・朝になった 僕とアステルとフブキは 人形の正体を知らなかったので デトレフを 何となく奇異の目で見つめていた・・ デトレフは それを知ってか知らずか いつもの通り明るくテキパキ ホテルを切り盛りしていた ホテル暁の家は僕達意外 客は いなかった ガランとした食堂に座り 僕達は・ライ麦パン・しぼりたてのミルク・ チーズ スープ やたら でかい目玉焼きの朝食を食べていた・・・その時 「ほら・・今朝の新聞だよ・・」デトレフがヒースランドの新聞・ゲルブ・ブーフを僕に手渡してくれた・・新聞紙は黄金色で あまり大きくなく・小さい文字が びっしり並んでいた・たぶん ヒースランド語で 書かれているのだろう まったく文字が読めない・・「僕ヒースランドの文字読めないんだ・・ デトレフ読んでくれくれないかな」一瞬デトレフは少しだけ怪訝そうな顔をしたが・・ こころよく 新聞を受け取り読み始めた ヨルクガンドの街で大きな事件があったという・・昨日の夜中ヨルクガンドの若い男が誘拐されたらしい それも 白い魔女にだと言う 目撃者の話では白くて長い髪の黒いマントを まとった若い女に男が さらわれるのを 見たという 「白い魔女と言われる若い女が ヨルクガンドの 若い男を連れ去る事件が多発してる・・もう これで7人目だよ・・僕もスバル君も気をつけなくちゃ・・・でも白い魔女が どんな 力を持っているか知らないが・・女の子に連れ去わられるなんて・・なんて弱々しい奴らなんだ」 内心 僕はアンタに言われたくねーよ・デトレフと思ったが黙っていた
「大丈夫だよ・・スバルは私が守るから」アステルが突然僕の顔を見て真顔で 言った・・「うん・・アステル・・僕も君を守る」僕達には もう見えない 信頼関係が結ばれていた・・僕達は しっかり見つめ合った・・ そんな僕らをフブキが冷やかした・・「ヒューヒューでござる・熱いでごじゃるじゃあ せっしゃ は デトレフ殿を守るでござるよ」 「えっ・・君があ・・自分の身は自分で守れるよ・・こう見えても僕は めっぽう強いんだぜ・・」 デトレフが腕を まくり 力こぶを作ろうとした・ しかし貧弱で余りにも痩せているので筋肉の欠片もない・・ するとフィオナが「お前本当にフブキに守ってもらえ」と呆れたように言った 僕はもう一度新聞を手に取った・・・白い魔女もしかしたら・・探している 白い虚無に関係があるかもしれない・・そして白くて長い髪と いうのも気になる 僕は詩音のことを思い出していた・・あの日惨殺された詩音の事を・・そんな僕をアステルが切なそうに見ていたことを僕は知らなかった・・
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