瞳
その長椅子に座った美少女の人形は生きているみたいだ 今にも動き出しそうなほど 精巧に出来ている……そして 僕に 微笑みかけたような気がする なんか すごく気味が悪かった……でも そう見えただけなんだ 僕は長い旅で疲れているに 違いない……デトレフも 人形のことについて それ以上何も言わない……もう 忘れよう 人形のことは……僕たちはホテルのフロントでチェック イン を すますと デトレフに部屋を案内された 部屋はべットが二つにテーブルとソファー……ドレスを着た貴婦人の肖像画が飾って あった 部屋は かなり 年季が入っていて古そうだが 隅々まで 掃除が 行き届いていた デトレフの祖先は貴族で特権階級だったがデトレフの祖父の代で貴族が 優遇された時代は終わりを告げた……貴族としての階級と所有していた 数々の城や土地は 没収されず代々ハノーファ クライフ家に相続されているが 城の 維持費が 大変で 今は宿屋や博物館に 改装して 一般市民に開放したり 商売しているとの事 自分はこの宿屋を両親と共に切り盛りして発明家と二足のわらじを履いている事……デトレフが話してくれた そして 夕食の時間になり 食事のメニューはソーセージ じゃがいも サラダに パンなど……簡素だが とても おいしかった そして 寝る時間になり それぞれの部屋……アステルとフブキ フィオナとセシリーが二人ずつ相部屋になり 僕は 一人で眠ることに なった……僕は一人になると色々考えることが あった……現実世界の事を ほっぽりだし この異世界ラダ・ナークへアステルに半ば強引に 連れてこられた……生まれて初めて旅をして 戦い 色々な人に出会い……今ここにいる……現実の世界は今……どうなっているのだろうか 僕は行方不明と言うことになっているだろう 突然学園の屋上から消えてしまった少年……僕のことだ……僕は現実から 逃げ出したかったんだ……詩音を……あんな 形で失い……現実の世界で僕は居場所を失い……悪いのは詩音を殺した 奴ら なのに ……そう想うと自然に目から涙が溢れ……僕がラダ・ナークにいるのは何故だろう……この世界をミロクと共に仲間と共に救うため? 現実逃避? ……それとも アステルの事を愛……やめておこう……考えるのは……僕は元々ラダ・ナークの人間だと……アステルが言っていたし……灰色の僕の目……子供の頃から実は不思議だった……なぜ僕の目の色はこんな色なのか? ……そして両親に あまり似てないのも……僕は僕は何者だろう? ……僕は目を閉じ……考えていた……そして……眠りの世界へ 引きずり込まれた…… その頃セシリーは長椅子に座る美少女人形の瞳を見つめていた……吸い込まれそうな深い青い瞳 フィオナと一諸に眠っていたが……良く眠れなかった あの人形の事……美少女人形はどこか寂しげで……セシリーは友達になって あげたいと思っていた……一人 部屋を抜け出し あの美少女人形の元へ 何か魔力の様な ものに 誘われるようにして……無垢な幼い少女の心は人形の悲しみに気づいていた…… 人形の頭を 優しく セシリーは撫でようとした……その時だった……「そこで何をしている!」茶色のガウンを着た一人の男が怖い顔でセシリーの後ろに立っていた……デトレフだった……
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