表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
222/274

コイン一握り分のプライド。

ジャスティン.ランベルト。あたしの剣の師匠。強くて、正義感がある優しい男。あたしは、剣の他にも、生き方や信念も、学んだ。



    「フィオナ。どんな、強い相手でも、ひるむな。戦え。そして、弱い相手には、剣を向けるな、守れ。」



 「この世に生きる価値がない奴は、いない。どんな奴にも、この世に生まれて来た、宿命が、役割がある。今を精一杯生きるんだ。」


 剣の修業は、厳しかった。だが、あたしは、初めて、自分を人間として扱ってくれる人に出会えた。人生の師でもある、ジャスティン。あたしのプライドは、いつも、コイン一握りで、踏みにじられてきた。祖母に一握りのコインで、売春宿に売られて、コイン一握りで、男たちに買われた。それは、どんなに屈辱的な事だろう。人間として、尊厳を焼き捨てられ嘲られ。あたしには、もう何にも、価値が無いと、散々思わされた。しかし、ジャスティンは、あたしに、「強さ」と言う価値を与えてくれたのだ。





    あたしは、ナタリアを捨ててしまった事を、悔いた。あたしは、大人になり、あの教会に行くと、ナタリアは、もう、この世にいなかった。あの時、運よく、教会の、シスターに拾われたものの、その後、はやり病で数年で、亡くなったらしい。あたしは、懺悔した。そう、あたしは、ナタリアの面影を、背中に引きずって生きていこうと。



  そして、今、。…  あたしは、ここにいる。



         「フィオナ、どうしたんだ。君の事を、皆が心配している。」





  リカードだ。あたしに話しかけてきた。



  「何でもない。気分が悪くなっただけだ。アイツ⦅エステバン⦆が生意気だったから、懲らしめたんだ。」





   「フィオナ、しかし。尋常じゃなかった。君は。」



  「ふん。リカード。お前みたいに生まれながらにしてエリートは、あたしの気持ちなんて分からないさ。」




  リカードが当惑したように、紫色の混ざる、ブルーの瞳を大きく開けた。その色は、どんなに、手を伸ばしても、掴むことのできない、青空のようだ。


  そして、リカードの波打つウエーブのブロンドは、真新しい金貨のように、照り返す、太陽の光に、ただ、ただ輝く。



  それが、宿命のように。



  フィオナがどこか、悲しく言った。



   もう、行こう、と。






   …こんな状態で、まだ、見ぬ敵と戦えるのだろうか。



   よく晴れた青空。ナタリアの瞳の色にも似ている。





   

読んでいただきどうもありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ