奇妙な夢
少年は、わからずにいた。何故、こんな夢を見るのか。こんな病んだ夢を。いや、 自分自身が病んでいるので、こんな夢を見るのか。謎だ。 豪奢なべット。王侯貴族が眠る様な。そして美しく、整頓され、豪華な調度品、高級家具が並べられた大きな部屋。 フカフカの布団に、くるまり、一人の少年が昏々と眠りについていた。少年は、どこか気品がある顔立ちをしていて、少女の様に可愛いらしく細面で、可憐・・・で、その美しい瞳は、 堅く閉じられている。 少年の夢の中に、案内しよう。きっとその方が話が早い。 その 少年は一人佇んでいた。何故ここにいるのか、自分は何者なのか。わからずにいる。そこが現実なのか、 虚構なのか。・・・わからずにいた。 まるで真っ白なキャンバスの中に自分が居るようだ。純白の空間…。何もない、無の世界。 すると、少年の耳に声の欠片、声にならない叫びの様な物が、飛び込んできた。 何なのか、わからない。不思議な、いや、奇怪な感覚。そして、少年の前に、いつものアイツが現れた。 アイツ。奇妙な。サムライと呼ばれる、異国の戦士。いや、異形の戦士。鎧兜をかぶり、分厚い鎧に身を包んでいる。手には大きな槍を持ち、その 禍々しい槍で少年に襲い掛かる。 大きな槍が少年を襲う、その時だった。 少年とサムライの前に、何者かが、立ちはだかった。まるで修道服の様な、ドレスを着た長い黒髪の女だった。 女は、刃が所々朽ちて、 ボロボロの日本刀を、振りかざしてサムライに攻撃しようとするが。逆にサムライの槍に切り付けられる。 女の身体は、真っぷたつに切り裂かれ、鮮血や内臓やら、臓器がぶちまけられた。それで夢は終わった。 少年は、目を覚ました。そして、全ての汚れを払うように、僅かに翠色のかかる白い髪を振る。少年の、 冷たい、利発そうなアイスブルー色の瞳は、澄んだ空気を求めるかのように、部屋の白い壁を見つめた…。 この少年は、まだ知らずにいた。いずれ自身の存在が、この世界、そして、ラダ・ナーク を 変えることになる事を。
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