美しい仮面の下に
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まるで心の奥底を見透かされているようだ。 心の中の触れられたくない所を、見えない透明な手が探っているように、その若い女の言葉は確信を突いていた。鋭い刃のように。 若い女の声は、まだ続く・・・・・「あんたは両性具有の神の様な存在になりたいと思っている。この世で、唯一無二の存在に。でも、あんたは、所詮…人間だから、あきらめている。そうよね。人間が、そんな神聖な存在になれる訳ない。自然界で もっとも低俗な人間が。」 聞き覚えがある、若い女の声は、どこか馬鹿にしたように、嘲るように語りかけてくる。 その声は、アステルの声にも、白き魔女セレーネの声にも 似ている。この声の主は何者なのか。… 「そうだ。お前が何者か知らぬが、確かにお前の言う通りだ。だが、俺は俺以外の存在になりたいと思わない。俺は、自分を愛しているからだ。そして、もう俺は、唯一無二の存在だ。」 「あたしは、そうは思わない。あんたは一番この世で自分が可愛い、正しいと思っている冷たいナルシスト。 他の人間を見下し、嗤い、 馬鹿にしている。心の中で。…あんたの冷たい仮面の裏側では、そんな醜くて、そう、あまりにも、醜すぎる素顔が常にあるのよ。ウフフ。」 「俺は醜くない。!!!! 醜くなんてない。!!!!!!」 ツキハは、狂った様に叫んだ。いや、叫んでいた。無意識に。生まれてこの方、醜いなどとツキハは言われた事は 無い。青空の草原にツキハの声が響いた。 「私と一つにならない?あんたは、私と一つになる事で 己の「醜さ」から逃れられるの。私は虚無。あんたの心を救うわ。私と一つになりなさい!!!!!!!!!!!!!!!。」 当然、若い女の声が激しい調子になり、それと同時に、ツキハの「 世界」は白く輝き始めた。不思議な感覚だ。でも悪くもない、感覚だ。その瞬間、ツキハの姿は青空の草原から、姿を消した。忽然と。どこに消えたのだろう。ただ青い、そして永遠に続く虚空がツキハが今までいた、場所を 静かに見下ろしていた。