悲しいほど綺麗な空
一人の青年が、悲しげなほど青く美しい空を見つめていた。この空と結ばれたい。本気でそう思うほどの美しい空だった。他の人がこの空を見ても特に何とも思わないだろう。しかしこの青年は、感受性が恐ろしく強くて、美しいものが異様な程好きだった。 この青年の名はツキハ・サクラ。背はすらりと高く 華奢で、涼しげな目元。鼻筋は高く鋭い。顏の輪郭は細面で鋭角的、 肌は、 陶器の様に滑らか。 髪の色は、墨汁の様に黒々として艶がある。 一見、美しい女性にも見える。見目麗しい青年。
幼少の頃から、美しいものが好きだった。 血みたいに 紅い鶴の折り鶴。 冬の空気。鋭く、研ぎ澄まされた寒さ。余分な贅肉の欠片がなく、穏やかな微笑みを浮かべた弥勒菩薩の像。余分なものを省いた、ぜい肉を剥いだような簡素なもの。が好きだ。特に。逆に、ゴチャゴチャした、幼稚な、雑な、俗世的な、卑猥な、もの。・・・・・が大嫌いで醜くさえ思う。独特の美意識を持ってた。幼い頃から。 そして、今も、それを貫いているのだ。そして、今ツキハを包む世界、眼下に広がっている風景。 何もない広い草原と、ただ雲を漂わせている青空。何故、自分がここにいるのか。ここにいる事に何の意味があるのか。?ただただ、ため息をつくばかりだ。何故俺はここにいる?。 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 「ここは、あんたのココロの中の風景よ。・・・・・・」 頭の中で、どこかで聞いた事のある、若い女の声が聞こえて来た。静かに囁きかける声が。
「お前は、誰だ。どこにいるんだ。ここはどこだ。そして、俺は何なのか。」
「あたしがあんたを。呼んだのよ。皆がいる中から。仲間の中から、あんた一人を選んだ。」 「あんたは仲間達と白い虚無。この世界を、ラダ・ナークを、密かに包むものと闘っている。そして、旅してる。でも、あんたは心の中じゃ、ホントは人間が・・・・邪悪の根源だと、思っている。人間が全て、究極的には、居なくなりすれば、この世が美しくなると思っている。本当の、究極の美を 知る自分だけが生き残れば良い・・・と。」
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