美しき剣士と闇の獣ラセツ
チユキの 唸り声が響く。それは 血に飢えていると同時に、この世の全てに恨みを持つ闇から生まれた者の産声の様にも聞こえた。一行は、かたずを飲んでその様子を見つめていた。 そして、その時黒い・・・まるで絶望の様な・・だが、どこか神聖な?様な煙がチユキの身体から、立ち込め始めた。何とも言えない匂い・・髪の毛の焼ける匂い。生臭い何かの生き物の息の匂い。それらの匂いが、広い部屋の中に充満し始めた。 「なんだこの匂いは。いったい何が起きるんだ?。大丈夫だ。お前らはあたしが守るからな。」 フィオナは、そう言うとヘンゼとヴィクトル・・・ 運良く助ける事ができた、この二人の幼い少年たちを抱き寄せた。 その時アステルは、かつてないほどの危機を感じていたのだ。闇の波動が、ビリビリと伝わる。何か不吉な何かが、目を覚ました。目を覚ましてはならない者。本当は古代の時代より、封じ込まれていた 者が、人間達の薄汚い欲や幼稚極りない行為から、目を覚ましてしまった様に思えた。 その時だ。煙の中から、黒い大きな翼。赤い大きな目。強大な牙。ドラゴンの様な奇妙な黒い獣が 現れたのは。 「これは、ミロクに似ている。ねえアステル!!これは黒いミロクじゃないか!!!!」 昴が驚いた声を 出した。 確かにこの黒い獣は。チユキが変身したと思われる。(チユキの姿は黒い獣が現れた途端に消えてしまった。)はミロクに姿形はよく似ている。しかし、幾分かと言うよりは、だいぶミロクより小柄だった。しかし、恐ろしい何かを感じ取った、アステルは無言で昴を守る様に正面からきつく抱きしめた。 フィオナに 腹を蹴られて、おとなしくなったはずのデッドリーフが再び大きな声で興奮した様に怒鳴っ た。「 ラセツ。 覚醒したようだな。こいつらを握り潰せ。そして、すべてを焼き尽くすが良い。ギャハハハ。」 ラセツと呼ばれた獣が、大部屋で暴れ始めた。いくら広い部屋でも、縦に長い頑丈な部屋で も、小型車一台分の大きさのラセツが暴れるとミシミシと部屋が揺れ、今にも壊してしまいそうだ。 だが、攻撃する事はできない。いや、できないはずだ。良心的な心を持つ仲間達ならば。 ラセツは フブキに 酷似したチユキが覚醒して 変身した姿だからだ。しかし、ここに一人冷酷非情な男がいた。ツキハだ。 自らの刀を抜き、この端正な顔立ちの、見目麗しい男は、ラセツへの攻撃を開始する。!!
読んでいただきありがとうございます。




