怒りの拳
デッドリーフが 一行を部屋に招いた。妙に大袈裟な微笑みを浮かべて。その部屋で、一行が見た物は余りにも異様な光景だった。 チユキと言う少女・・フブキ・サクラに酷似している・・・・が、血まみれで倒れている。青白い部屋の壁や床に深紅の少女の血が、飛び散り・・・それは、異臭を放っていた。まるで拷問を受けた後の様に。そして、やはり 血まみれの鞭。少女がこの鞭で打たれたのは、どう見ても明らかだった。そして、黒い群衆。30人くらい。人々は仮面を被り、誰一人として少女を助けようとする様子はなかった。 アステルは、その様子に耐えられず、すぐにチユキに駆け寄った。セシエルやゼニアスと思われる猫も。
「この子、大丈夫かしら。ああ。ひどい。傷だらけで。」 アステルがチユキを介抱した。心配そうに、チユキの顔をアステルがのぞき込む。 チユキは気を失っているようだ。その瞳。赤い瞳は固く閉じられている。本当に、あどけない、かわいらしい顔立ちの少女だ。 「この子。まだ死んでないかしら。セシエル様。まだ息はしてる様だけれど。」 「そうんねん。まだん生きてるんわん。でもん、酷いん状態ンだわん。早くん病院にん。」 独特の喋り方でセシエルが、心配そうに少女の顔を覗き込む。ゼニアス猫も、心配そうに見つめ、目を 大きく見開いている。 一方、デッド・リーフはと言うと、リカード達に馬鹿丁寧にお辞儀をし、媚びる様に微笑みかけ た。 「あの子は私の養女でして、でも、言う事を聞かないんです。 だから、御仕置きを。ハハハッ。犬も飼い主に、歯向かうこともあるようで。」 「 お主が、あの子を。そうでござるか。お主が、あの子を。」 リカードのちょうど後にいたフウマが、噛みしめる様に言った。ハイランスは、フウマの言い知れぬ様な憎しみと怒り。 デッド・リーフ への・・・・を感じキューキューと鳴いた。 デッドリーフは、それに気がつかなかった。そして、相も変わらず ヘラヘラ愛想笑いを浮かべる。 そして、いきなり、フウマがデッド・リーフに、詰め寄ると。 バキ。鈍い音が青白い部屋に響く。 「ぷぎゃあああああああああああああああああ」 デッド・リーフが思い切り情けない悲鳴を上げて、ふっ 飛んだ。 そして、壁に 頭をぶつけ、眼鏡もふっ飛び・・・・・・呻き声を上げた。 「何をする。いきなり。私の美しい顔を殴るなんて。」 かなりの怪力の持ち主のフウマに殴られては、元も子もない。 「 貴様は、あんな幼子を。拙者。許す事は、できないでござる。」 「フン。あいつはただのガキではない。 くだらん正義感を出して後で、絶望するのはお前だぞ。」 「ふふッ。そろそろ薬が切れかかる頃だな。ラセツよ。 お前たちは、この世の絶望を知るがいい。」 このデッド・リーフの言葉が何を意味するのか・・・・・・・・それと呼応する様にチユキの体が突然震えだした。
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