少しの静寂
闇で閉ざされた大広間に、静寂が漂い始めた。時間が少しずつ過ぎて行く。フィオナは少年達を、励ます様に言った。 「お前達。今からあたし達は、お前達を見世物にして殺そうとした奴らを見つけ出して叩きのめしに行く。お前らも来い。大丈夫だ。あたしがお前達を守ってやる。」 これから先、何が起こるかわからない。しかし、ここに少年達を残して行くのは危険だ。大男らやヘルムートがいつ気がつくかわからないからだ。少年達を放置してはならない。 「そういえば、お前達の名前を聞いてなかったな。何て言うんだ 。」 少年達はヘンゼとビクトル、それぞれ自分の名前を言った。 「ヘンゼとビクトル、二人共いい名前だな。じゃあ行くか。」 「待ってよ。フィオナ姐さん。あいつら探すのはいいけど・・・。この洋館中を探すつもり?。ならこいつに聞いた方が早いよ。さあ、 言いな!!」 セレーネがデトレフの耳をひっぱり上げながら言った。 「痛い、痛いよ。放してくれ。言うよ。だから。・・・・・・・・・僕が案内するから。」 いきなり、セレーネがデトレフの耳を放した。すると、デトレフの顔が食べ物の掃き溜めの中に落ち、びちゃあ、と音がし、その勢いで食べ物の汁が、セレーネの胸元へ飛び散った。セレーネは、露骨に 嫌な顔をした。 「はあ、(デトレフ)お前を信用して大丈夫かなあ。まあ。裏切りそうになったら、あたしがぶち殺してやるけれど」 そう言うと、デトレフを意味深な流し目でフィオナが見た。 デトレフが懇願する様な真剣な表情をした。犬が飼い主に、媚を売るように。 その顔見て、セレーネがフフフッと馬鹿にした様に微笑んだ。そして 「まあ、いいんじゃあないの。ね、フィオナ姐さん。こいつ( デトレフ)が 裏切ろうとしたら、あたしが八つ裂きにしてもいいわよ。」 その時だ。セレーネが言葉を言い終わる寸前に、大広間のドアが開き足音が響いた。 誰かが部屋に入って来た。
それはアステルだった。
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