戦うマリア
そういえば奴らが何処にもいない。これは、いったい ?チユキ(ラセツ)、デッドリーフ、黒ミサの集団 、執事のセバスティアンも大広間から、いなくなっていた。 大広間に残っていたのは、フィオナ、セレーネ、フィオナにとどめの一撃を食らわせられ、 気絶した ヘルムート神父。そして、 大悪魔ヴァフォメットはセレーネの放ったキルケーの呪いに耐えられずに、デ トレフの身体から退散した。食べ物の掃き溜めの中で正気を取り戻したデトレフが何やら、呻いている。やはり気絶し倒れている 黒装束の大男達 、それからブロンドの幼い少年達だ。 ブロンドの少年の一人は鎖にぐるぐる巻きにされて大泣きしていた。もう一人の少年は、なんと か、金色の檻から抜け出し、やはり恐怖とショックの為、大声で泣き出した。この少年達は、身寄りが無く、孤児院で暮していたが、デッドリーフに言葉巧みに騙され、ここに連れて来られたのだ。 フィオナは、少年達の元へ急いで駆け寄ると、一人の少年の鎖を解いてやった。もう一人の少年もフィオナに駆け寄る。一応、アステルの作戦は成功した。この少年達をギリギリの所で助ける事が、で きたからだ。だが、この黒ミサで毎回、無数の少年少女達が、犠牲になったにちがいない。 「ママ。」鎖に縛られていた少年が、フィオナを見て呟いた。大きな澄んだ瞳を、涙でいっぱいにして。それを聞いて、フィオナは、二人の幼い子供達を無意識に抱きしめていた。 フィオナは何も声を掛けてやれなかった。気の利いた言葉も 慰めの言葉も、ただただ少年達が、 この上なく、愛しい存在に思えた。フィオナは、感じる事が出来た。少年達のこの世に、大人に対する絶望感を。 フィオナ自身も幼い頃、実の親に捨てられ売春宿に売られた。どれほど憎んだことだろう。どれほど泣いたことだろう。同じく親に売られた、ナタリアと言う少女と親友になった。が、・・・・・・ いつしか 彼女も失い、売春宿を抜け出し、格闘技や剣術を師匠に学び、 やがては、 剣闘士になる事ができた。・・・・・過去があたしを強くした。いや、させられたんだ。 少年の一人の心には、フィオナの優しい瞳は、教会で見た聖母の像・・・・を思い出させた。 フィオナは優しく少年達を抱きしめ、その、それぞれの額にキスをした。
読んでいただきどうもありがとうございます。4月14日の小説の投稿は作者の都合で お休みさせていただきます。