キルケーの刑
アイアン・メイデンの体は燃え盛り、そして無残な灰になった。 それを得意げで残酷な微笑みを浮かべた セレーネが見つめている。そしてヴァフォメット・デトレフの方をキリッと 睨み付け、言い放った。 「今度はあんたの番だからね!!容赦しないわよ。」 「 ほう。お前なかなかやるじゃないか。そいつ(アイアン・メイデン)には正直、手を焼いていたんだ。処分して頂きどうもありがとうよ。アハハッ。」 「ずいぶん余裕じゃない。ヴァフォメットさん。でも そんな軽口をたたけなくしてやるから 。」 ヴァフォメットはセレーネを、完全に見くびり、 馬鹿にしていた。大悪魔である自分が、ひ弱な人 間の青年の身体に憑りついているとはいえ、こんな小娘に負けるはずないのだ。少しだけ遊んでやろう。 ヴァフォメット・デトレフが一瞬隙を見せた。その時だった。セレーネは素早く呪文を唱えた。 そして、一言。「豚になーれ!!!!」 「何!!!なんだ。これは。どーゆーことだ。ブヒい? 」 不意を突かれて、ヴァフォメット・デトレフがキョトンとした。ブヒい?。何故。…豚の鳴き声の様なモノが自分の口から、漏れるのか。そして、異様に腹が減り、ノドが乾く。何やらおかしい。 そして、気がつけば、ヴァフォメット・デトレフは、テーブルの上にある肉料理やら、パンにかぶりついていた。人間の食べ物など食べたくないのに。いや。むしろ食べたくないどころか、汚物の様に嫌 いなのに。
気がつけば、まるで、貪欲に食らいついていた。まるでその姿は、豚の様だ。でも好きで むしゃぶ りついているのではない。人間の食べ物は悪魔にとって、異常なくらい不味い。とても食えた物ではなく・・・・ だが、勝手に手が動き食べ物を口に運ぶ。ブヒブヒ奇妙な鳴き声を、発しながら。 セレーネがヴァフォメット・デトレフに放った呪文。それは、魔女キルケーの呪いだった。キルケーは、古の伝説の魔女で、人を動物に変えた事で知られている。 「ほらあ、残さず綺麗に食べなさいよ!。食べ物を粗末にしたらマーマが許さないから ね。」 そう言うとセレーネがヴァフォメット・デトレフの尻を思い切り蹴り上げた。 「ブヒいブヒい。(この小娘め。)」 もう喋る事もできない。プライドはズタズタだ。大悪魔である、このヴァフォメット様 がこんな女にしてやられるとは。・・・・だが、食べ物を吐き出す事もできず、 胃がはちきれそうだ。 一方フィオナは、悪魔の様な神父ヘルムートに拳をお見舞いしていた。ヘルムートは 危険な武器を持 っていたが、戦いにおいては素人だ。攻撃は常に空回りし、プロの格闘家であり、常人離れした身体能力と手足の長さを持つフィオナの敵ではない。しかし、何度もやられても、ゾンビの様に立ち上がり攻撃を仕掛けて来る、ヘルムートに 手を焼く。 一種の不気味さを感じていた。 そして、いつの間にか、デッドリーフ、ラセツ、黒ミサに集まった人々が、 大広間から居なくなっていた。彼らは、いったいどこへ・・・・。
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