酷似する二人
昴達は、チユキと言う少女に会いに行く事にした。ゼニアス言うには、(セシエルを介して)チユキは、死霊の棲家の近くの白い廃墟のような家に住んでいると言う。
そこは、荒れ果てた家だった。所々に窓のガラスが割られ、 赤いドアには、落書きが殴り書きされてい た。屋根には無数のカラスが留まっている。昴がドアを叩いた。すると、少女がドアから顔を出した。・・「ドクターデッドリーフ?」少女が花びらの様な唇から澄んだ声を出した。
「違うよ・・・。それは誰?・・。僕達は話を・・したくて・・。」
「あなたたちは誰よ!。私は、あなたたちのことは知らないわ。」
少女の紅い瞳、ウェーブのかかった赤茶色の髪。誰かに似ていた。少女はフブキに酷似していた。顔立ちも体つきも全てが。・・フブキ・サクラそのものだった。まるで生き写し・・。でも少女はフブキではなかった。この子は10歳のチユキと言う少女だ。
チユキは、窮屈そうなヨルクガンドの民族衣装を着ていた。幼い胸がはだけてしまいそうで痛々しかった。 それを見つめていたフィオナがは思った。子どもの頃の。・・少女の時代の・・記憶が蘇る。
薄汚い大きな廃墟の様な売春宿。・・9歳から15歳位の少女達が・・客を取らさせられていた。客や売春宿の主に虐待され、人としての・・尊厳をズタズタにされた日々。少女達は金を絞り出す物であり、利用されていた。汚い大人達によって。この少女 ・・チユキも、・・同じ匂いがする。形は違うかもしれないが。・・
「あなたはフブキに似てる。あなたは何者なの?話してちょうだい。フブキは私達の仲間よ。ドクター・デッドリーフてっ何者なの。あなたの両親は?なぜ一人で子どものあなたが住んでいるの?」
アステルが次々とチユキに、疑問をぶつけた。アステルはフブキに酷似したチユキに、親しみと懐かしさを感じていた。
「何故・・私があなたにそんな事言わなければならないの。」
チユキは凛とした声でアステルの問いに答えた。声もフブキその物だ。だが性格は。・・・ 氷の様に冷たい表情のチユキ・・・。
いきなりドアをチユキにピシャリと閉められた。チユキの心の様に赤い扉は閉じられた。
家の中からドアに鍵をかけたらしい。・・ゼニアスと思われる灰色の猫が虚しげに「にゃああああ」とないた。・・・ドアはもう開くことはなく。・・
昴達は、戸惑いその場に立ちつくした。黒いカラス達が馬鹿にするように、愉快に鳴いていた。
そういえば・・この頃デトレフの姿を見ない。いつも留守だ。何処に行くのだろう。
何故か悪い予感がした。不審な行動を取るデトレフに。・・・・・
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