猫は語る・・
セシエルの問いに灰色の猫は、頷くかわりにセシエルの瞳をじっと見つめた。
「ゼニアス様・・この猫が。・・まさかそんな。」
リカードが本当に驚いた様に呟いた。この痩せこけた元気のない猫があの大賢者ゼニアス様だと!・・。まさか・・ふざけるな。
「本当よん。・・ゼニアスんよ・・この猫ちゃんはん、誰かにん、強力んな呪いをん・・・いいえん・・強力んな誰かんにん呪いんをかけられたん。」
灰色の猫は、セシエルを思い込めた様な瞳で見つめた。そうだと言わんばかりに・・。
「にゃあああ〜にゃああああああーにゃややーにゃ」
猫が鳴き始めた。何かを言いたいようだ・・。
空は曇り、さっきの晴天が嘘の様に、暗くなった。不吉な予感がする。
「にゃんにゃん にゃあうん・・・ にゃーにゃー?」
何とセシエルが灰色の猫と、話し始めたではないか。しかも・・非常に真剣な顔で・・だ。
一同はその様子に唖然とする。そんなことおかまいなしにセシエルは、猫語を駆使し、灰色の猫と何やら、話?をしている。
「ちょっと!セシエル様!こんな真剣な時にふざけてないで。・・」
アステルがたまりかねて、セシエルに物申した。しかし、セシエルはマイペースに猫と話をしている。・・・・
それは、傍から見ると奇妙な光景だ。いかにも知的そうな美女が、猫と話している。しかも大量の遺体が見つかった墓場で。・・
そうこうしているうちに、ゼニアスと思われる猫とセシエルは、会話をとりあえず終えた。
セシエルは猫の言葉を理解し、皆に猫の言いたいことを告げた。
猫の本当の姿はゼニアス・エヴァハート・・アルフィンの大賢者で、セシエルの弟。このヨルクガンドで白い虚無を見つけ・・戦ったが、もう一歩の所まで追い詰めたが、逃げられて、その際、油断したすきに、猫の強力な呪いをかけられたと言うのだ。不覚だった。気が付くと魔法も使う事ができず、喋ることもできなくなり。・・途方に暮れ、この死霊の棲家と言う墓場を、彷徨っていたを所を、チユキと名乗る少女に拾われたと言う。・・・
一同は、あっけにとられた。セシエルの言う事が真実なら。・・大変な事だ。あのゼニアス。超強力な魔力を持つゼニアスが油断して、猫に変身させられとは。・・・・
そして。・・その後の話も驚くべき物だった。
そのチユキと言う少女は自分にナーチャと言う名前をつけた。そして、この惨劇の前夜。・・背の高い金髪の男がチユキの住む家に現れ、・・それから・・。
はっきり・・思い出す事ができないと言う。覚えているのはその男が、チユキをラセツと呼んでい た事。・・
ラセツ・・不気味な響きだ。・・そう思ったのは、フウマとツキハだった。
ラセツとは・・東方の国の言葉では悪鬼を意味するからだ。
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