灰色の猫・・凄惨な地獄絵図
残酷な描写があります。・・ご注意ください。・・
それは余りにもショッキングな光景だった。ここは、死霊の棲家と言われる・・朽ち果てた墓場。・・不気味な十字架や、墓が誰にも手入れされずに、野ざらし状態にされている。
そこに・・13体の血まみれの惨殺死体が転がっていた。死体は、鋭い獣の牙で食いちぎられたような状態で、手足も首も、バラバラにされ・・そこらここらに散らばっている。あたり一面おびただしい血の海だ。13体の死体は、数時間たっているらしく蝿がたかり、強烈な臭い・・腐敗臭と血の匂いが混ざった様な異様な臭いがした。
地上の、この世の地獄の様な光景と違い、空は皮肉な程青く美しかった。
この若い死体達。・・どの顔もまだ、あどけなく・・幼い・・14〜5歳の少年少女だ。・・まだ10歳くらいの本当に幼い子どももいた。少年少女達に何があったのだろうか。この若い命達を瞬時に・・(死体は意外に安らかな顔で抵抗した跡がなかった。)奪ったのは、何者だろうか。
最初に、死体を見つけたのは墓守りの男だった。墓守りの男は、この凄惨な光景を目にして、叫び声をあげ、その場にへたりこんだ。そして助けを呼び、この事件が、ヨルクガンドの街中に広がることとなっ
た。・・・街中の人々が、この異常な光景を目にした。
アステル達も宿でこの事件を聞きつけ、現場に急いで向かった。
その悲惨な光景に、一行は言葉を失った。一番初めに口を開いたのは、フウマだった。
乾いた風が吹く。・・・不気味な叫び声のようにも聞こえた。
「何故・・こんな事になったでござるか。まだ幼子もいるでござる。」
アステルが思わず肩を震わせて、涙を流した。フィオナがそんなアステルを抱き寄せて・・優しく背中を叩いた。・・リカードは祈りを捧げ、ツキハは手を合わせた。セシエルは言葉を失い・・ショックを受けている。・・昴は、嗚咽した。また・・若者の死を見てしまった。・・・・
セレーネは、押し黙ったまま微動だにしない。・・・・
その時だ・・・木の陰から・・灰色の猫が現れた。・・猫は傷つきブルブル震えていた。
猫はアステル達を見つめ、セシエルの前に立った。
「この猫ちゃん。・・・ゼニアスん。・・もしかして。・・」
猫は頷く代わりにセシエルの瞳を見つめた。
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