紅い空・・それぞれの想い
昴達一行は、アステルが変身したミロクに乗り、ヒンディールを後にした。結局・・アステルの秘密はアステルの故郷ヒンディールを訪れても、謎のまま・・この国を去る事になる。昴は心に大きな疑問を抱えたまま・・
セレーネはミロクには乗らずに、一人別行動をとり・・その溢れんばかりの魔力で空を飛び、ヒースランドの港町ヨルクガンドに一足先に旅立った。
ミロクは、ゆっくりと空を泳ぐように進んで行く。山や湖や海を超え・・一行は自然を見る余裕があった。この美しい世界が脅威にさらされているとは想像もつかない。どこまでも空は青い。・・
気が付くと、青い空は次第にくすみ・・紅く燃え上がる空になった。 海の向こうに夕日が見える。
巨大な夕日だ。夕日の光を浴び、聖なる獣ミロクは神々しいまでに金色に光った。
夕日を見つめ、昴達は各々感慨に浸っていた。過去の過ちを後悔する者、 戦いにしか、自分を表現できず・・生きられない者、愛する人を失った者。・・それらの感情をすべて飲み込み紅い空はどこまでも続く。そして夜が来る前に・・どこかで休むことにして。小さな島があり、街が見えてきた。
ミロクは、その小さな島に降り立った。ミロクはすぐにアステルの姿になり・・アステルは長い空の旅で少しだけ、疲れて衰弱していた。
「アステルさん・・大丈夫か。・・随分疲れてそうだな」
ツキハが・・その場にへたりこむアステルを気遣い、声をかけた。
「大丈夫よ, ツキハさん。・・今夜の宿を探しましょう。」
その頃、セレーネ・ヴァイスと言えば・・もうヒースランドのヨルクガンドに到着していた。
「遅いわねえ、アステル達・・アタシがこんな所で待つとはねー。」
セレーネは、小さなヨルクガンドのカフェにいた。カフェの名前はペトゥラ。甘い焼き菓子とクレープ・・美味しいコーヒーが名物だ。セレーネは甘いものを頼むでもなく、コーヒーを頼むでもなく。・・その場の椅子に静かに腰掛けていた。
ここはアステル達との待ち合わせ場所だが、なんとも居心地が悪い。それもその筈・・ここはファミリー向けのカフェで・・どうしてもセクシーな白いローブを着た美少女・・セレーネは目立つ。カフェの客達は、皆一様に、セレーネをジロジロ見た。その視線に耐え切れずに・・ (セレーネは意外と気が
弱いところがあった。)「見るんじゃないわよ」ブツブツ言いながら・・カフェ・・ペトゥラを後にした。
読んでいただきありがとうございます。・・