白き自由の翼
アステルと昴が、テラスで静かに語りあっていた時。他の仲間達は、すっかりワインや酒で酔いが回り、ごきげんに眠りについていた。
皆は疲れていた。ここで、もし敵に襲いかかわれたら、全滅していただろう 。余りにもだらしがない
姿で幸せな顔をして、皆、深い眠りについていた。
そんな時、誰かがリカードを揺り動かし話しかける者がいた。
「リカードンちゃん、起きてん。・・もうん・・ 起きてん」
「うーん・・誰だ?・・私は・・リカード・・クレッチマン・・・」
「私んよん・・セシエル・エヴァハートよん・・・・」
「セシエル?・・・・・・・・えッ・・ セシエル様!」
リカードは、思わず飛び起きた。なんと・・セシエルが、少し厶ッとした顔でこちらを見つめてい る。
良く整えられた、艷やかで滑らかな、ウエーブのかかる亜麻色の髪、顔立ちは整い、上品だ。いかにも知的そうな大きな瞳が輝いている。しなやかで色白痩身の体を赤いドレスが包んでいた。
リカードは思わず顔が赤くなった。自分のだらしのない姿を、大賢者セシエルに見られてしまったのだ。
「ど・・どういたしましたか・・セシエル様。・・・」
「リカードンちゃん・・白いん虚無んが、ヒースンラんドんのヨルクんガんドんというン街んで ん目撃んされんたんそうよん。」
「えっ・・・ ヒースランドの街!ヨルクガンドで・・白い虚無が・・・」
リカードは、急に酔いがさめた。とても難解なセシエル語(独特の話方)も理解し・・そして デトレフの顔が浮かんだ・・。ヨルクガンド・・・・デトレフの住む街である。
「白きん自由のん翼んと言う宗教団体んが、かかわってるんらしんのよん。」
「白き自由の翼・・宗教団体・・・」
リカードはセシエル語の難解な言葉を理解し訳した。
それにしても・・白き自由の翼・・・白い虚無・・胸騒ぎがする。・・・
「ゼニアスんが調べたわん・・・ゼニアスんがヒースんランドんでん調べたんわん。でもん・・それからん・・ゼニアスんからん連絡んがこんないんのん。」
「ゼニアス様があ・・あの ゼニアス様があ。・・ヒースランドで行方がわからなくなる・・・。」
ゼニアスは、セシエルの弟である。アルフィンの五大賢者の一人で、飄々とした青年だが、強大な魔力を持つ。・・・
「 セシエル様・・・・私は酷く胸騒ぎがします。ただならぬ不吉な・・・・。」
「リカードンちゃん。私んもよん。・・なにかん悪いん予感がするのん。・・」
気が付くと他の仲間達も酔いから覚めて、その話を聞いていた。
皆が青ざめた。・・・白き自由の翼 ・・・・・
その不吉な匂いがする言葉は、これから起きる惨劇の序章にすぎなかった。
夜がまた来る。・・・刃・・を研いで・・・・血塗られし刃・・・・・
我々を待ち構えている。・・・・
読んでいただきありがとうございます。・・