夜みたいにいつか消える。・・永遠じゃない。
アステルと昴は、透明なテラスの窓から・・しばらく夜の空を見ていた。今日の夜はどんよりしていて、星もあまり見えない。・・・
「これから先・・僕達はどこに行くの。アステル。・・」
「そうね。・・わからない。・・白い虚無の行方もわからないし。・・その手がかりもない。」
「あの二人を早く助けなくては・・悪い予感がするよ。僕は・・・。」
「何か得体の知れない・・強大な力がこのラダ・ナークを侵食し始めている。私の千里眼でも、この所わからないの。白いモヤみたいな物が。・・・視界を見えなくするのよ・・。」
「・・・・割と探したい者は、近くに転がっているのかも・・アステル。遠くを見ようとするから・・見えないんじゃ・・ないのかなあ」
昴がため息をついた。そしてアステルが目を閉じた。
アステルの髪のウエーブが月に照らされキラキラ光る。テラスの中は風が無いのに、アステルの美しく艶の有る髪が何故か風になびいているように見えた。
朝が来ない夜はないのだが。・・・夜が襲ってこない朝もない。夜は暗く時として恐ろしいが
安らぎの時間でもある。人間にとって、無くてはならない・・眠りの時間だ。昴は朝が来るのが嫌だった。ずっとアステルと二人きりでいたい。・・そう思った。
だが・・夜は静かに消えていく。・・永遠じゃなくて・・。今生きている僕達もいつかは、老いて消えてゆくだろう。自然な事だ。僕達、人間はその瞬間を大事にして、ささやかな思い出を糧に生きている。儚いものだ。・・・・
この世に終わりのないものがないみたいに。僕達の旅も戦いもやがて終わる。命も・・。
だから僕は綺麗な思い出を、これから沢山作るんだ。この時を生きるんだ。僕はまだ死にたくない。
「あなたのことは私が護るわ。あなたを誰にも壊させない・・・。私が死んでもね」
「えっ・・アステル?」
昴は死について考えていたのに、いきなりアステルの言葉に・・決意めいた言葉にドキリとした。
「さあ・・もう寝ましょう。もう夜も更けてきたし。・・疲れているでしょう。」
アステルが寂しげにつぶやいた。
読んでいただきありがとうございます。・・