紅月
夜は更けてゆく。昴達は、心ゆくまでご馳走を食べ・・上等なワインを飲み・・( 未成年のアステルと昴以外)心も胃も満たされていた。セレーネもまだ、未成年のはずだが・・・一番ワインを飲んでいて、すっかり、できあがっていた。
「ねえ・・金髪のお兄さあん・・あタフィといっひょに踊らなーい」
ほとんど・・へべれけ状態のセレーネ・ヴァイスが、やはり酔いが回っていたリカードに、声をかけ、
抱きついた。
いきなりのセレーネの大胆な行動。・・胸が危険に開いたセクシーなドレス姿の美少女に、いきな り抱きつかれ、リカードはドギマギした。
「君・・いきなりなんだ・・。汗・・・私は、もう愛する女性が・・」
「別にいいじゃないのよー。このセレーネ様が誘ってるんだから。」
リカードの腕を強引にセレーネご自慢の・・美しい胸に、セレーネが押し付けようとした。
「こら・・君い・・逆セクハラは・・やめたまえ!おいおい」
その慌てふためく、リカードの様子が面白く。・・皆が、やんややんやと茶化した。
その中で一人浮かない顔をした者がいた。アステルだった。
アステルは静かに、その場の席を外し・・一人、月が見えるテラスに行き・・ ため息をつく。
アステルは一人考えていた。あの不気味な白い虚無・・さらわれたランスロッテやフブキの事を・・忘れもしない。・・そして、これから始まろうとする過酷な戦いを。胸騒ぎがする。なにか不吉な者が蠢いている。・・・
アステルは肩を静かに、震わせた。その時 だ。アステルの小さい肩を後ろから優しく抱くものが・・
「誰!」
アステルが後ろを振り向く
「僕だよ。アステル・・・・」
昴だった。アステルがホッとした様に、あなただったの・・・と・ため息をついた。
昴が照れて、急いでアステルの肩から手を離した。その様子がおかしくて、アステルが一瞬微笑んだ。
アステルの微笑んだ顔が余りにも愛らしく、・・照れて昴が、下を向いた。
昴は、一人その場を抜けた、アステルが心配で静かに後をつけていたのだ。
「アステル・・何か・・体の具合でも悪いの」
「そんなんじゃあないわ。でも・・ありがとう。・・・・・・・ 」
アステルが寂しげな顔で静かに言った。
昴はアステルを見つめた。今夜のアステルは一段と綺麗だ。緑色のドレス・・アステルの瞳と同じ色のドレスは、月の光りに輝いている。紅い月・・テラスの透明な窓から見える月が、アステルのピンク色の髪を紅く染める様に、照らしていた。
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