恋咲ける武士道
風呂の騒動から、とっぷり日が暮れ、夜の8時頃になった。
アステルが所有する邸宅の台所から、良い匂いが漂ってくる。メイドのメイランが、皆に美味しいものを食べて鋭気を養って欲しいと、腕をふるっていた。
そして、客用の食堂の細長い、テーブルに色とりどりの、美味しそうなご馳走が並んだ。
ステーキ、スープ、シチュー、山羊のチーズ、焼きたてのパン・・ワイン・・そして色とりどりの宝石の様な果物が乗った大きなホールケーキ。
風呂に入り、それぞれ用意された服に着替えた仲間達が、テーブルについた。
男性陣は、くだけた感じの服装だったが、アステル、フィオナ、セレーネ、の3人・・・女性陣達は、ドレス姿で現れた。
アステルは自身のグリーンの瞳の色に合わせた、ふわふわした可愛らしいドレス。フィオナは褐色の肌によく似合う赤のエレガントなロングドレス、セレーネは胸と背中が大胆に開いた銀色のタイトなドレスを身に付け、髪をシニョン風に結っていた。
楽しい食事会の始まりだ。会話も弾むし、料理も進む・・ワインも進んだ。まだ未成年のアステル・昴はオレンジジュース・・・しかし未成年のはずのセレーネはワインをがぶ飲みしていた。
「 メイランも一諸に食べようよー」アステルが、甲斐甲斐しく皆に肉を切り分けているメイランにも声をかけた。
「 はい・・私もお言葉に甘えて・・・」メイランは、椅子を持ってくるとちょこんと座り、楽しい
宴に参加した。
「君、メイランちゃんと言ったね。パン焼くの凄く上手いな。・・・」
メイランが座った席は、偶然にもツキハの隣だった。
「今度暇な時に、俺に美味しいパンの焼き方・・教えてくれないか。・・もちろん二人きりで」
「えっツキハ・・さん・・はい・・私でよければ・・」
ツキハは微笑んだ。色白で女性のように美しい顔、痩身で長身・・女の子を誘うのもスマートだ。・・
それを面白くなそうにツキハの兄・・フウマが見つめていた。
「兄と弟ではこうもちがうかのう。・・切者は・・女人の扱い方、よくわからないでござるよ・・アステル殿も切者の事なんて、眼中にないでござるし。」
その時キューキューとハイランスが、フウマを慰めるように鳴いた。
「ハイランスよ、お主が美しいオナゴだったら・・」
ハイランスはフウマにとてもなついていた。
フウマはステーキの半分をハイランスに食べさせてやった。
「キューキュー」 ハイランスは嬉しそうに鳴いた。
「なーに・・ フウマやってんだよお・・飲まねえのか」
フィオナがフウマに絡んできた。フィオナは、すっかり酔いがまわり、ワインのグラスを片手にフウマ の肩に 手をやる。以外にもフィオナの手はしなやかで、指は細く長い。爪には白いネイルがされていた。
フィオナの女らしさにフウマは、ドキドキしながら、夜は更けてゆく。
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