希望、光る
美しい花畑が目の前に広がる。妖精のようにキラキラした花が宙を浮かんでいた。
「綺麗・・」
アステルは宙を浮かぶ花に目を奪われていた。
セシエルの春を呼ぶ魔法で雪に埋もれていた時の神殿は、一面、白い花が敷き詰められた楽園のようになった。
「おい!見ろよ・・みんな。地下に続く階段みたいのがあるぞ!」
フィオナが大声を出す。雪で隠されて見えなかったが、神殿の階段の真ん中辺りに、それらしき階段があった。この地下にフブキとランスロッテは何者かに捕らえられているのだろうか。
「もしかしたら・・罠かもしれないぜ。どうする?」
ツキハが腕を組み悩んでいると・・ポンとフウマが、ツキハの肩を叩いた。
「ここで、ボンヤリ花を見ていても・・しかたがないでござろう。・・男なら飛び込むでござる。」
「そうだ。・・フウマの言う通りだ。ここで立ち止まるわけには行かない。早く二人を助け出すんだ。」
「まあん・・リカードんちゃん・・。素敵ん、凛々しいん、カっこいいん」
「はははッ・・セシエル様。照れますよ。」
リカードの顔が赤くなった。
だが、気を取り直して・・「さあ、行くぞ。みんな。私が先頭に立つ。ついてくるんだ。」
リカードがマントを、ひるがえす。
皆がリカードを先頭にして、地下の階段に降りようとしていた時だ。デトレフが、放心した様に、宙に浮かぶ花を見つめていた。・・
(ここはまるで天国みたいだ。僕はあの世に逝っちまったっようだ。本当は、誰も憎みたくないんだ。
リカード・・への複雑な思いが、わだかまりが。完全に消え去るのは、いつだろうか。)
「デトレフさん、どうしたんですか。早く行きましょうよ」
「ああっわかったよ。・・スバル君。行こう」
急いでデトレフが皆の後を追う。
一行の行く先に何があるのか?・・・。妖精の様な宙を浮く花たちが、励ますように、その身を案じるよう
に、儚く瞬き光った。
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