雪と花
静かに氷の像が動き出す。しかし、まだ、一行は知らなかった。
だが、ただ一人フウマだけは感じていた。この時の神殿の異常さを。・・
「なんでござるか。この異様な雰囲気は。皆、気をつけるでござる。」
フウマが空を見上げ、噛み締めるように言った。
その時だ。巨大な氷の像が、一行に突然、襲いかかった。
のっぺら坊の巨大な氷像は大きな拳を、ちょうどデトレフのいる氷の階段に、叩きつけた。
バキィ。デトレフは、とっさに逃げ出し・・。階段は拳を叩きつけられても、ビクともしない。
アステルが怒鳴る。「みんな!気を付けて!こいつらは生きてるわ!!」
その時、皆の心の中に声が響いた。
「皆んさん。・・このん氷ンの怪物んは、剣んはん通じないわん。剣のん技んも。魔法でんで、できたん生き物ん。固まらずんに、ちりじりんバランバランに逃げて、私んが、魔法んでなんとかんするん。・・」
セシエルの声だ。そうすると皆は、散り散りバラバラに逃げ出した。
二体の像が、アステル達を踏みつけ、拳で、叩き潰そうとする。
皆、自分の身を守るのに懸命だ。
その時、リカードが・・炎の魔法で攻撃を試みた。・・しかし、時の神殿の冷気に、かき消されてしまった。
(魔法も効かないじゃないか。・・あたしたちは・・ここで・・死ぬのか?)
フィオナが絶望で立ち尽くした。
その時、大賢者セシエルがブツブツ、何かを詠唱し始めた。
するとキラキラ輝く花が、辺りを包んだ。
キラキラ輝く花は、その内・・神殿に張り付くように、覆い始め・・・。
何と・・!雪深い時の神殿はポカポカ春が来たように、あたたかくなり始めた。・・
雪は急激に溶けて氷の像は、次第に動かなくなった・・氷でできた時の神殿はキラキラ輝く無数の花が咲く、美しい花畑になった。
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