友達
「私はメイラン・リー・・ウオーレム家に仕えるメイドです」
ウオーレム・・アステルの苗字だ。メイラン・リーは丁寧にお辞儀をした。
「アステルお嬢様の留守を守っています」
アステルが情熱的な薔薇ならメイランは清楚な百合だ。対照的な二人だった。
寒さの厳しいヒンディールならではで、大きな暖炉が燃えていた。
アステルには両親がいないのだろうか?その姿はない。
「私の父と母は死んだのよ・・ある事故でね」
アステルはうつむいたまま話さない。とてもショックなことなのだろう。
暗い空気を無くすようにメイランが・・
「私、お食事を作りますよ。皆様お腹すいてるでしょう」
そう言うとメイランは台所に去っていった。
メイランの作ったホワイトシチューと焼きたてのパンは素朴ながら、とても美味しかった。
僕らは風呂に入ると大きな客間に通された。沢山べッドがあり、とても豪華な作りだ。大きな洒落た窓、美しい壁紙、天蓋付きのべッドが置かれている。
絵画や良い香りのする花が飾ってあった。
僕以外の他の皆は、ぐっすり寝ているようだ。でも僕は寝れない。
夜中になると思い出す詩音の死、エルンストの死、そして(生き返ることができたが)フブキとランスロッテの惨たらしい姿。
夜になるとフラシュバックのように思い出す。
苦悩していた。青いパジャマに涙が滲む。
まるで悪夢が僕を食うように僕を襲う。なぜ嫌なことを思い出してしまうのだろう。
辛く悲しい思い出と言えない程、残酷な思い出たち。
忘れたいのに忘れることができない。この凄まじい思い出達を僕は一生背負う事になるんだ。僕も詩音達と一諸に、いっその事死にたい。
そんなことを考えながら泣いていると、誰かが、声をかけてきた。
メイラン・リーだ。
メイランは、優しく闇の中で微笑んでいる。
「どうしたのですか?泣いているのですか?アステル様のお仲間ですよね。アステル様の友達なら私も友達になりますよ」
メイランが優しく言った。
「あ・・ありがとうございます・・メイランさん」
僕は美少女に微笑まれて照れながら言った。
「何か悩み事でも?私にも苦しいことはあります。忘れたいことも・・でも変な事を考えちゃダメですよ。」
僕が考えていた事を見透かされたようだった。そうだ。もっと前向きなことを考えるようにしよう。僕は生きてるんだ。死んでいるのではないのだから。
読んでくださりありがとうございます




