フィオナの瞳が・・
今回は暁の家です
デトレフは、しばらくの間・・フブキの手を握りしめていた。そして、ランスロッテの額とフブキの唇に軽くキスすると、自分の部屋に籠もり始めた。
「デトレフさん、どうしたんだろう、いきなり自分の部屋に入っちゃて」
「スバル、デトレフさんには何かやりたいことがあるのよ。そっとしてあげて」
「アステル・・そうだね」
「あのデトレフと言う奴、医者なのか?あたしの目が何かおかしいんだ。」
昴達が心配してフィオナの瞳を見つめると、フィオナの瞳は右方の瞳が、赤く濁った色をしていた。すると、コンタクトレンズが落ちるように、赤く濁った、
瞳の欠片がポロポロ落ちてきた。
フィオナの瞳の色が左右共、透明な茶色の瞳に戻った。
「フィオナ、大丈夫?」
「ああ・・あたしは何をやってたんだ、アステル・・あたしは、あたしは、」
「フィオナ!記憶が戻ったのね!」
アステルは、フィオナに今までのことを話した。
「そうか、フブキとロッテが、あいつらイイ奴らだったのに死んじゃったか」
フィオナのブラウンの瞳から、涙がこぼれ落ちた。
「それにしても、セシリーが、でもセシリーはそんな子じゃない!操られているんだ。あたしと同様に」
「それってどゆー事なの」
「お前たちと別れた後、あたしとセシリーは途方に暮れていて、どこへ行けばいいのか・・そんな時あたし達の前に奇妙な男が現れたんだ。アルザエムとか言ってた。空の上にあるズイルバーンと言う国に来ないかって、住む所も仕事も紹介するって言われてヤケクソになってた、あたし達はすぐその話に飛びついて、それから、何もかも忘れられる薬だって言われて、それを飲んだらアタシもセシリーも今までの記憶を忘れてしまった・・というわけだ」
「そうだったの・・」
その頃デトレフは、蘇りに関する本、生命医学の本を読み漁っていた。
何かにとりつかれたように、膨大な難解そうな本を、貪るように読んでいた。
確かに命の蘇りは禁じられている。でも、僕が神になるのだ。今の僕を誰にも止められない。デトレフは固く目を閉じた。ランスロッテの笑顔、そしてフブキの笑顔が脳裏に浮かぶ。まるで、妻子に突然死なれた父親、夫のようだ。・・・
今のデトレフは。・・・
読んでいただきありがとうございます。