愚かさ
僕達は何時間ぐらい、気を失っていたんだろう。
ミロクは、いつの間にかアステルに戻り、皆は放り出された様にそれぞれ、散らばっていた。
最初に目を覚ましたのは僕だった。それから、アステル達も目を覚ました。
「ここはどこだい・・アステル」
「スバル・・ここはデトレフさんの故郷、ヒースランドのヨルクガンドの森よ」
フウマもツキハも憔悴していた。何せ妹が死んだんだ。・・僕も悲しいし・・悔しい。でも一番悲しいんでいるのは、デトレフのように見えた。
ふたりの亡骸を抱き、今も泣いている。ランスロッテは、人形とはいえデトレフの娘であり、妹だった。そしてフブキ・・デトレフにとって生涯の中で初めて出来たガールフレンドだったのだろう。
愛する者を二人同時に失った悲しみは、計り知れないだろう。
皮肉な事に二人には、天使の様な翼が生えていた。
アイリスハート先生からもらった錠剤を飲んだのだろう。激しい痛みがあると聞いた・・それで二人は、のたうち回りアイツに見つかったんだ。
やるせない気持ちでいっぱいだった。僕達は泣いた・・アステルもフウマもツキハもリカードも・・それをフィオナは同情するような目で見ていた。
「あいつら・・お前たちの仲間だったのか」
「フィオナ・・私たち仲間だったじゃないの!覚えてないの」
アステルが怒ったように言った。
フィオナは答えない。まるで僕たちを知らないようだ。
「誰のせいで、こうなったと思う」
デトレフがリカードを睨みながら言った。
「私の作戦ミスだ」
リカードが下を向く。
「作戦ミスだって・・へへっ」
デトレフが皮肉たっぷりに言った。
「私が・・悪いのではない・・ミカエルドだ・・そして、それにしたがった衛兵達だ」
「あんたの娘もずいぶん悪乗りしてたじゃないか。二人に死装束までしてくれてさ・・さぞや二人共幸せだったろうよ」
「デトレフ・・もう過ぎたことだ、許してくれとは言えないが」
「ふん・・忘れるものか!あんたもあんたの娘もバラバラにして殺してやりたい」
いつものデトレフと違い、語尾に鋭さがあった。
「親も親なら子も子だな、似てるよ、あんた達・・そうやって逃げて来んだろう・・問題から・・あんたの娘は、娼婦みたいだよ」
「なんだと」
「二人共やめなさいよ!そんな事言っても二人は・・戻っては来ないわ」
風が・・いつの間にか、夕暮れを告げる。人の愚かさをあざ笑うかのように
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