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『10チェンおじさん』の教え

小3の時、数ヶ月もの間、僕達は『10チェン』と言う遊びにハマってた。


事の始まりは友達の一言から始まった


「なあ、10チェンおじさんって知ってる?」


最初は「なにそれ?怖い」と思いました


友達の話はこうだった


■友達が自転車こいでたら川原に1人で空き缶のゴミ掃除をしてるおじさんがいた


■暇だった友達は「手伝いますよ?」と声をかけたが、無視された


■しかし、優しい友達は手伝った。後々知る事になるけど、おじさんは無視したのじゃなく無口だった


■空き缶を一ヶ所に集めて、掃除が終わると「10チェン(ジュッチェン)」と言い、おじさんは10円くれた


という事があったらしい


友達は「これは稼げる」と思い、数回おじさんの元に家から空き缶をビニール袋に入れて訪ねては『10チェン』を貰ったと言う。


僕達は興味が出た。少ない小遣いの僕達からしたら、例え10円でも頻繁に貰う事、お金を作る事が出来るなんて凄い事だ!


そして僕達3人は、早速「行ってみよう」と決めた


そこで友達は言う。


「これには謎がある」と。


その謎とは『空き缶が何個から10円になるのか解らない』との事


友達は10個程持って行って10円の時もあれば、

5個程の時も10円だったらしい。


「なるほど。とりあえず近所のスーパーとか自販機で集めて行ってみよう」


僕達3人の青春が今始まった!!



僕達は子供の力で周りを気にせずゴミ箱を漁った


とりあえず3人で20個ぐらい空き缶を集めた。友達の教訓によると、それを一つにまとめて渡すと10チェンの可能性がある


「3当分に分けて、3人で30円を貰う作戦に出よう」


ナイスアイデアと思った。


そして僕は初めて10チェンおじさんに会った。

友達の話通り無口な人。


「こんにちわー」と挨拶しても


「………。」と黙ったままコクリと頷くだけ。


本題であるビニール袋に入れた空き缶を渡した。


すると古そうなガマぐち財布から10円を取りだし

「10チェン」とくれた。3人とも10チェン貰った。

噂は本当だった!


そして、1人10円もらう作戦は成功した




それから僕達は何度か、繰り返し10チェンを貰いに行った!


「この事は3人だけの秘密なー」と、

僕達は仲間意識が強まった。


この事を僕達は『10チェン』と名付けた。秘密の暗号のようなものでもあった。


たまに、ゴミ箱を漁って向かって行くと、10チェンおじさんがいない時もあった。

そんな時は『10チェン広場』と名付けた秘密基地(小さな林)に貯めていった。


違う日にそこから数個持って行き「10チェンゲット」


そして違う日にゴミ箱漁り「10チェン広場に溜める」という行為を繰り返した。


数週間は繰り返した。



そんなある日、僕達が10円の事を『10チェン』と呼ぶ事が当たり前になった時、疑問が生まれ始めた……


「100チェンは可能なのか?」と。


僕達は会議を始める事にした


「今、僕達は週に3回程、活動している」


「しかし、10チェンおじさんに持っていく空き缶は一部なので、空き缶が溜まってきている」


「そろそろ10チェンの壁を越えれるのではないだろうか?100チェン、欲しい」


僕達は『1人100チェン分』合わせて300チェンの空き缶を溜めて、まとめて持っていくぞ!と決まった。


僕達な言わば『10チェンのプロ』

大体の目安はわかってる!やるぞ!!


漁りに漁った。近所の空き缶がありそうな所を!

スーパーの店員さんに少し怒られた事もあった。

だけど悪いことをしてる意識がなかったので、気にせず漁った。


それはそれで楽しかった!



そして、決戦の時を迎えた



移動手段は自転車。それはもう大変でした。

大きなゴミ袋2つに無理やり入れたけど、まあ重い。僕達の小さい体からしたら、まるで岩!

荷台にビニールひもでくくりつけた。


「100チェン貰ったら、ねりねりねるねを買うんだ」


初代ねりねりねるねの時代、僕達は必死な思いで

10チェンおじさんの元へ向かった


おじさんいた!!


「おじさーん、これぇー!!」と、推定300チェンはあるであろう空き缶を見せる。


コクリ、と頷くおじさん。


ワクワクする僕達


なんせ、推定300チェン。持ってくるのも頑張った!

(さあ、なんチェンだ?)ワクワク。


おじさんはガマぐち財布からお金を出して言った

「20チェン(ニジュッチェン)」


「……え?」となる僕


「あの、、これ、300チェン…」と聞く友達。


「20チェン」と言うおじさん。


それ以上何も言うことも出来ずに、僕達は帰った……




帰りしな、不信感が芽生えながらも僕達は語った


テーマは

「なんで?ねえ、あれ10チェン?ねえねえ?」


僕達は今までの事がアホらしくなった。

丁度、10チェン広場の空き缶も無くなった。


「もうやめよう」と決断するのは早かった。


こうして僕達の青春時代は幕を閉じた。




【大人になった今思う事】


おじさんは多分、僕達の事を思って20チェンにしたのだと思う。


僕達は、クセになってた。


『10チェンを貰える事』


『ゴミをお金に変える事』


『人は弱い生き物。すぐクセになる。』


10チェンおじさんは、きっとそれを見抜いて、僕達に商売の厳しさを教えてくれたんだろう……


商売の難しさを知った、僕の青春の一ページ!








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