結婚
なあ聞いてくれよ、俺のカミさん酷いんだ。
毎日家にいるのに何もしてくれないんだぜ。
洗濯も掃除も一回もしたことないし、
メシだって作ってくれた事ないんだ。
そうだよ、炊事洗濯まるでダメなんだ。
俺の面倒なんか全く見てくれやしない。
アイロンなんか、かけるわけもないし、
靴だって磨いてくれた事もない。
俺が触ろうとするとスッと消えちゃうしさ、
手だって握った事もない。
そうだよ、洗濯も掃除もメシも全部俺がやってるんだ。
メシなんか自分の分とカミさんの分を毎日だぜ。
掃除で思い出したけど、カミさんが雑巾持ってる姿なんか見たこともないよ。
ゴミ出しもオレの担当だし、買物だって全部俺だぜ。
スーパーとかでネギなんか買って帰る時の情けなさ、お前判るか?
そのくせ、余所の人に何か頼まれると嬉しそうにしやがるし・・・。
たまには俺の頼みも聞いて欲しいもんだぜ。
そうだよ。
俺の頼みなんか一度も聞いてくれた事ないよ。
酷いと思うだろ?
でも俺、カミさんのことが大好きなんだ。
毎日あいつを拝んでればいつかは手も握れるだろうし、
俺の頼みを聞いてくれることもあると思うから・・・
だから毎日我慢しているんだ。
え? カミさんと何処で知り合ったかって?
まあ在り来たりだけどさ、出張に行った先で偶然出くわしたんだ。
一目で気に入っちゃってさ、その場でもう俺のモノよ。
そうか? 俺、行動派か?
そんなに驚かれるほどの事じゃないだろ。
それくらいの事するの俺だけじゃないよ。
うん、まあそれだけ気に入ったカミさんだからさ、
何もしてくれなくても俺の所に居てくれるだけで満足なんだけどな。
「それでお前いつ結婚したんだ?」
「結婚? そんなもんする分けないだろ。相手もいないし」
「でもお前、カミさんの話をずっと・・・」
「え? 神さんだよ」