指輪を外して貰えませんか?
あの事件の日からアルメヒティヒ家に住むこととなり数週間が経つが、指輪の魔法は全く解けないままであった。あの日以来メイドとして働くことにならなくなったのでメイド服は着なくなったが、ヴァイスハイトとゲニーのきっての頼みでお世話は続けることになる。
寝所もデーアはヴァイスハイトと、アンジュはゲニーと一緒なのだが、所々触っては来るものの、所謂添い寝しかしてこない。デーアとアンジュは悶々としていて、痺れを切らしたアンジュがなんでキスをしないか問いただすと、男二人は口を揃えて初夜にとっておいてると言った。意外とロマンチックな二人を可愛いと思ってしまってるあたり、あばたもえくぼだとデーアとアンジュは項垂れる。
「キスもないとかアイツは聖人君子か?!」
好きな人の隣で過ごすうちに、色々溜まってきたアンジュがキレ気味に叫んだ。
「ヴィーがそうだからもしかしたらと思ったけどゲニーもなのね」
デーアとアンジュは自分が大切にされてることは充分痛いほど分かったが、指輪の件もありこのままでいいのかと悩む。二人もやはりできたら初めては初夜がいいと思っているが、魔法を使う実技試験が二ヶ月後になり焦り始めていた。
最終学年の六学年目の試験結果は将来の仕事に大きく関わる。一年間の総合得点が学年で五番目までに入ると、就職先への推薦状が貰えるのだ。デーアは語学が得意なので外務関連、アンジュは魔法が得意なので魔法関連で働きたかった。ヴァイスハイトは政務に、ゲニーは魔法を研究する仕事に就きたいと言っていた。
学校が終わりアルメヒティヒ家に帰ってくると、夕飯まではゲニーが指輪にかかってる魔法を分析する時間だ。
ゲニーはアンジュがしてる指輪を触りながら沢山の術式を手探りで解析する。ヴァイスハイトとデーアは手がかりとなるような文献がないかアルメヒティヒ家の図書室で本を漁った。
「私だけ何もしてない気がする……」
「頭をフル回転する僕を癒して、やる気にする大事な役割がある」
ゲニーはぷうと頬を膨らませるアンジュの手を取り額にキスをする。
アンジュは愛されてる実感に幸福感を感じながら、このまま愛する人に頼ってばかりでいいのかと自分に問いただした。そして意を決して、おもむろに口を開く。
「ねぇ……ゴルト王子が言ってたことだから本当かどうかは分からないんだけどね。一つ方法があるみたいなの」
アンジュのスカイブルーの瞳はじっと目の前のスカーレットの瞳を見つめた。
「男の人に……キスしてもらうと、外れるみたい……なの。黙っていてごめんなさい!」
今まで知っていても言わなかったことを問いただされるかと思ったアンジュは、震えながらゆっくりと顔を上げゲニーの顔色を伺う。
「なんだ、そういうことなら早く言ってくればいいのに。言いにくかっただろうに正直に話してくれてありがとうな」
アンジュはゲニーにポンポンと頭を撫でられ、一向に責めてこない愛する人に胸がいっぱいになった。アンジュはこの人を好きになって良かったと、もうこの人以外好きになれないと確信する。
ゲニーは図書室にいるヴァイスハイトへテレパシーを送った。二人はお互いがテレパシーをしたいと思わなくても、一方的に送れるよう改良してあるのだ。
「部屋に戻ろう。ゲニーが何か話があるみたいだ」
「え?」
「ゲニーからテレパシーが来た。一方的に送ってくるのは大体緊急のときだから。行こう」
ぐいっとデーアの肩を引き寄せたヴァイスハイトは魔法を使い自室に転移する。
「指輪の外し方、分かったぜ」
「デーア、ごめんね。話しちゃった」
「まぁ……いつかは話さないととは思ってたけど」
「だってゲニーがこんなにも頑張ってるのに話さないのは心苦しくて」
「大丈夫、責めてないわ。アンジュに言わせてしまって私こそごめんね」
デーアは愛しい妹を抱きしめた。アンジュも愛しい半身の姉を抱きしめ返した。
「どうやったら指輪は外れるんだ?」
「あ〜。あっつ〜いディープキスすればいいみたい?」
「え?! 違うよ! 普通にキスしてもらえればいいんだって!」
「あはは、ごめん。ちょっと願望が入った」
「いや、でも念の為そうした方がいいのでは?」
「ヴィー、貴方ってツッコミだと思ってたけど案外ボケよね」
デーアはため息をついて、ツッコミ不在にならないよう自分がしっかりしなくてはと心に誓ったのだった。
夕食が終わるとデーアとアンジュは、ヴァイスハイトとゲニーの待つ部屋の奥の二つの扉の前に進む。
「これからするのよね」
「だめ、緊張してきた」
「女は度胸よ!」
「わ、分かったわ!」
腹を括ったデーアとアンジュはそれぞれの部屋に入っていった。
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