メイド姿で御奉仕します
「とてもお似合いですよ。こんな可愛らしいメイドなら坊っちゃま達もきっと喜ぶと思います」
侍女頭であるふくよかな女性、ラーヘルはメイド服に着替えたデーアとアンジュを褒めたたえた。
「あの、スカート丈短い気が……」
「メイドさんってこんな格好するんですか?」
この国の貴婦人達は基本的に足を見せない。スカート丈も短くてもふらはぎである。デーアとアンジュのスカート丈は膝上丈だった。
「これは我が侯爵家の伝統……所謂男性の好みでございます。けして普段のメイドはこの格好ではないのでご安心ください」
ラーヘルはにこりと笑う。
「「えぇ……?」」
これでいいんですと念押しされたデーアとアンジュは渋々仕事場であるヴァイスハイトとゲニーの部屋に入った。
「失礼します」
「なんなりとお申し付けください」
デーアとアンジュは恥ずかしくて顔から火がでそうになる。もじもじしてる二人をヴァイスハイトとゲニーが見つめた。
「確かにこれは……」
「父上グッジョブ……」
息子達は父親に心の中で感謝する。
「掃除は昼間の間にしてもらった後だし、これから風呂入って寝るだけだからな?」
ヴァイスハイトは何か仕事はないかと頭を巡らした。ゲニーはいいことを閃いたと手のひらをポンと拳で叩く。
「そうだ! おやつがあるんだけど、食べさせてくれる?」
「そうだな、それくらいしか仕事はない」
ヴァイスハイトが頷き同意した。
「え、ちょっ! ちょっとまって!」
「おやつくらい自分で食べなさいよ!」
デーアとアンジュは必死に抗議する。
「まあまあ、仕事はちゃんとしなきゃなぁ?」
ゲニーがそう言い、二人は抗議も虚しく双子の兄弟におやつを食べさせることになった。
デーアは二人がけのソファーに座るヴァイスハイトの隣に座り、アンジュは同じく二人がけのソファーの上に座ってるゲニーの膝の上に横に抱かれる形になった。
「は、恥ずかしい……」
「下ろしてぇ〜!」
デーアとアンジュは真っ赤に顔を赤らめ、抵抗する。
「あーんはないのか?」
「あーんして? っていってくれないのか?」
ヴァイスハイトとゲニーはさも不思議そうにデーアとアンジュに問う。
「あー、もう! 仕方ないわね!」
「クソバカ魔法バカ! いつか火だるまにしてやる……」
デーアとアンジュが悪態をつき、鋭い眼光で睨みつける。だが、二人の兄弟には小動物が睨んでるとしか思えなかった。
「あ……あーん」
「あーん」
デーアがおずおずとクッキー差し出す。それをパクッとくわえたヴァイスハイトは、微笑する。あまり笑わないヴァイスハイトにデーアはドキッとした。
「あーん!!!!」
「あはは! そんな怒らなくてもいいのにな! あーん」
半分キレながらゲニーの口にクッキーを押し込むアンジュを見てゲニーはアンジュに対してふにゃりと笑う。ニヤリという笑みはよく見せるが、ここまで甘い笑顔を向けられたことのないアンジュは、顔を赤らめたじたじになる。
自分たちはこの双子兄弟を本当に好きなんだと自覚させられるデーアとアンジュははぁとため息を漏らした。
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