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1話 先生の先生

殺し。


それは人類が絶え間ない歴史の中で、行われた行為。

それは様々な動機で行われてきた。

妬み。

恨み。

怒り。

快楽。


時代は移り、思いは変われど、その行為の根本は変わらず。

それは人の生命の"終わり"を定め続けた。


そしてそれはいつしか、仕事として成り始めた。


仕事として人を殺す。

金の為、権益の為。

そんな幾つもの欲望で人の命なんて簡単に散る。


そして殺し方もまた様々。

ナイフなどと旧時代的な物よりも今の時代、誰にでも使える"魔法"の方が簡単で、楽に殺せるのだろう。

周りはそんな風に仕事をしている。

如何に楽に殺せるか。

或いは、美しく。


それでも私は、変わらずにナイフを扱い続けた。

「魔法は楽だ。楽に殺しを行える。

しかし、それではダメだ。それでは何時しか"殺し"に飲み込まれる。

いいか、××。

ナイフで殺した感覚を忘れるな。人を殺したという感覚を必ず忘れるな。

仕事であっても、人を殺すというのは人としての絶対の禁忌だ。」

先生は口癖のように言っていた。

私はそれを守り続けていた。


そしてそんな毎日を送っていたある日、とある人から呼び出しがかかった。

その旨を受け、その人の元に参じる。




......



高級クラブのボディチェックを受け、店内に入る。

そしていつものVIP席の個室に入ると


「久しぶり〜。元気にしてた?」


そう言いながらこっちにおいでと手を振る一際端麗な女性。


「お久しぶりです。先生」


そう言いながら頭を下げ、隣に座る。

すると、先生が周りの女の子達に「ごめんね、ちょっと大事な話があるから」と言うと周りの女の子達は名残惜しそうにしながらも、個室から去っていった。


「同性だからといって....誰彼構わず籠絡していますと、いつか後ろから刺されますよ。」


と、半ば諦めながら先生に告げる。


先生「あら、そんな事ができるのは世界でもアナタだけだとわかっての事かしら。ライヒェ?」


そう妖艶に微笑みながら話す先生。

漆黒ながらも、輝いている艶やかな髪。

誰もが羨む美貌。

触れたら切れてしまうくらいに鋭い流し目。

一挙手一投足が、誘惑足り得る所作。

服装も相まって、先生の容貌は1度見たら人によっては恐れすら抱く蠱惑的な美しさ。

他でもない、私の先生だ。


ライ「そういう意味じゃないと毎度言ってますよね...」


そう溜息をつきながら軽く項垂れると、その様子をいたく気に入ったのかのか先生はコロコロと笑う。


先生「相変わらずここのボディチェックくらいならもう難なく通れるみたいね」

ライ「先生のお陰ですから」

先生「もうそんな固くならないの♡」


そう言いながらもスルリと隣に来た先生は、腰に隠してたナイフをいつの間にか手で弄ぶ。


先生「とは言え、私に奪われるようじゃまだまだね」

ライ「...隠し場所は毎回変えてるんですが」

先生「ライヒェは素直だからね〜。可愛いくらい純粋」


まぁそこが良い所でも悪い所でもあるんだけどね

先生は、そう呟きながら私のホルスターにナイフを戻す。


ライ「それで先生。お話というのは?」

先生「ライヒェ。その前にひとつ確認させて」


そう言い、先生はこちらを向く。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


その視線は、いつもの穏やかな物から一変し品定めをするような冷徹なものへ。

その声音は、おちゃらけた雰囲気などなく生半可な思いを言葉に乗せようものなら、と有無を言わせぬ圧があった。

その様に、一瞬全身が強張りそうになる。

だからこそ、先生から目を離さず。

そして静かにゆっくり言葉を紡ぐ。


ライ「"殺しに呑み込まれるな"....。どんな刻でも忘れたことはありません。」


その言葉を放ったあとも先生は私から目を逸らさない。

そのまま何分間も見つめ続けていた。


するとフッと先生の口元が綻んで、


先生「その感じなら大丈夫そうね」


と、纏う雰囲気を緩ませた。

そして先生はニヤリと意地悪な笑みを浮かべた。

すぐに私は察する。あぁ、また何か変な頼まれ事をするのだなと...


先生「これから貴方は、学校の先生になってもらうわね」

ライ「...暗殺の学校ですか?」

先生「そんなものある訳ないじゃない。魔法の学校よ」

ライ「私魔法使えないんですが...」

先生「知ってるわ、だから貴方がなるのは一般教養の先生よ」


どうしよう。なんかもう頭痛が痛くなってきた。


ライ「暗殺者の私が、魔法の学校で一般教養の先生ですか...?」

先生「そうね、そうなるわね?」

ライ「....あまり先生にはこの様な事を言いたくないのですが...正気ですか?」

先生「あら、私に正気を聞くのは酷じゃなくって?」


先生は笑っているがその言葉を聞いて思わず苦々しい顔になってしまう。


先生「冗談よ。私からではないわ」


となると、更に上の....


ライ「...ならもっと断れないじゃないですか」

先生「断りたいなら断ってもいいと思うわよ?」

ライ「そうなったら夜逃げの準備ですね」

先生「貴方と一緒の逃避行とか凄く唆られるわね♡」

ライ「.....」


もうやだこの先生


先生「それに、私もその話には賛成よ。」

ライ「理由を伺っても?」

先生「貴方は、世の中の事を知らなさ過ぎるのよ。暗殺については一通り教えたものの、世の中の尺度なんて何も分かってないでしょう?だから、これを機に世の中の常識を学んでくるといいわ。」

ライ「....わかりました、それで今回の対象は?」

先生「無しよ」

ライ「.....つまり、今回は依頼では無いんですか?」

先生「ええ、そうね。もしかしたらあるのかもしれないけれど、私は知らされてないわ」

ライ「私本当に何しに行くんですか」

先生「言ったでしょ?常識を学んできなさい」



....そう言われたのがほんの数時間前。

話の後、先生から手続きは済ませてあるから明日から頑張ってねと言われて、高校に到着し、門の前の校舎名を見る。


「王立魔法高校 エトワール第1高校」



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