仕事は『神官』
本作品は、中年のおっさんの個人的なAIへの興味から派生し始めたものにつき、
作者が好き放題書き散らかしています。
ですので、皆さんが普通は書かないような事にこだわったりしてしまっています。
生理描写や衛生描写等が重く書いてる本人もスカッと全くしておりません。
お気に召さねばそっと閉じていただけると登場人物たちも喜ぶと思います。
それでも、お付き合いしていただける方はどうぞよろしくお願いいたします。
国教ルス教において、厳しい修行と莫大な献金、あるいは並外れた神聖力を証明した者のみが許されるはずの「高位神官」の証。
昨日、ゴロツキにわざと絡まれてリュンヌをけしかけ、更に「お布施」を巻き上げを敢行。
今日は言葉巧みに、辻説法を炸裂させる銀髪の悪魔は、教会の頂点に近い場所に座るべき存在だったのだ。
「....穢れてる。....ルス教、終わってる....っ」
ナギナタを杖にした、リュンヌの膝がガクガクと震え始める。
高位の聖職者が、路上で「コスパ」や「タイパ」を説き、いたいけな(?)少女をダシにして小銭を稼いでいる。
これ以上の宗教的冒涜があるだろうか。
「あ、リュンヌ、またそんな暗い顔して。幸福指数が下がってるわよ。ほら、もっと『光の加護』を浴びてる格好する。映えよ映え!」
「....もう、無理....最低....」
ルナはそんなリュンヌの冷めた視線などどこ吹く風で、銀のチャームを誇らしげに揺らしながら、さらなる「投資(集金)」を呼びかけている。
その時、人混みの向こうから、豪華な法衣に身を包んだ一団と、それを護衛する重装騎士たちの姿が見えた。
彼らの胸元にも、ルナと同じ銀、あるいはそれ以上の輝きを放つ紋章がある。
「....あ。....本物....来た。」
リュンヌは脂汗を流していた時よりも青ざめた顔で、ルナの服の袖を必死に引いた。
騎士の一人がルナとリュンヌを睥睨し声高に告げる。
「説法は教会ですべきものだ。いかな年端のいかぬ同胞とてこの様な辻説法は認められん。
我らが主の品格を冒涜せしものと思わんのか?」
「あら、ご苦労様でございます。騎士様」
ルナは臆することなく、むしろ挑戦的なまでに銀のチャームを光らせ、騎士の鋭い視線を受け流した。
その声は、リュンヌに向けられる時の軽い感じのものとは違い、氷細工のように冷たく、そして完璧な礼節を保っている。
「....お言葉を返すようですが。」
ルナは動揺の影すら見せず、騎士に真正面から
言い返す。
「熱心に働く信徒の方々に、わざわざ『神が推奨する仕事』を止めさせ、遠い教会まで歩かせるのが主の御心だと? 」
ルナは騎士に向かって平板な調子で言ってのけた。
「それこそ『タイパ』....失礼、神への皆様の奉仕の時間を奪う愚行ではございませんこと?」
「貴様....っ!」
騎士が剣の柄に手をかけた。だが、ルナの首元で輝く銀の紋章――自分たちの身分を凌駕しかねない高位の証――が、彼の動きを金縛りにする。
「(....騎士様....喧嘩売った....!)」
リュンヌはナギナタを抱えたまま、騎士の威圧感に縮み上がり、脂汗を通り越して冷や汗と涙目になった。
自分まで「異端者の片棒」として処刑される未来が、鮮明に脳裏をよぎる。
ルナはふわりと微笑みを深め、一歩前へ出た。
「法衣を汚さぬよう屋根の下に籠もるのも結構ですが、私は路傍の石にこそ光を当てるべきだと、主より『直々に』伺っておりますの。」
ルナは息を吸って一気にまくし立てた。
「異論がおありでしたら、聖堂参事会で……あるいは、私をお導きくださった『あの方』へ直接仰ってくださいますか?」
騎士たちの間に動揺が走る。「あの方」という言葉に、あからさまにたじろいだのだ。
騎士達が護衛しているルス教の高位司祭も苦笑している。
「その辺でよろしいのでは騎士殿。」
聖職者の柔らかい声が響くとルナは深々と頭を垂れた。
リュンヌは思った。この銀髪の悪魔、性格が最悪なだけでなく、背後も最悪にヤバいのでは。
「....リュンヌ、行くわよ。ここ、もう『集客効率』が落ちたから。」
ルナは勝ち誇ったように翻ると、唖然とする騎士たちを尻目に、石像のようになったリュンヌを再び強引に引きずり始めた。
「あのさあ、リュンヌ。あたしの『仕事』は神官なの。」
ルナがリュンヌを見ながら諭すように言う。
「あたしの話を聴いて、ああ今日もルス神様が見てくださってる、頑張ろうって聴いた人の気分を良くして報酬を貰ってなんで穢れてるの?」
「....それは、そう、かも....しれない、けど....っ。」
リュンヌはぱっちりとした瞳を揺らし、ナギナタを抱きしめたまま、ルナの正論すぎる返しに言葉を詰まらせた。
「....でも、普通....あんなに、あからさまに『お金、お金』って....言わない。もっと、こう….慎ましく....。」
「慎ましくして、餓死して、神様の元へ行くのが正しいって? バカ言わないで。生きて、稼いで、美味いもの食べてこその一生でしょ。」
神官の言葉からかけ離れた内容をルナは当然のようにあっけらかんとぶっ放す。
「あたしは『安心』と『やる気』っていう商品を売ったの。対価を貰うのは仕事として当然じゃん。」
ルナは銀のチャームを無造作に指で弾き、ケラケラと笑う。
リュンヌはふっくらした頬を膨らませ、納得しきれない思いを抱えながら、足早に歩くルナの後を追う。
「....やっぱり、詐欺師....。騎士様たち....脅して。....『あの方』って、誰?」
リュンヌの問いに、ルナは一瞬だけ足を止め、ニヤリと口角を上げた。
酷いですねえ、怖いですねえ自分で書いててもビビりますねえ。こんな割り切った子が家族だったらやられますねえ。でも、こういうプロ魂が欲しかったのかも自分に。
さて次回はいよいよ宿を替えます。少しQOLに成るのかな?




