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オレンジの香りのQOL

本作品は、中年のおっさんの個人的なAIへの興味から派生し始めたものにつき、

作者が好き放題書き散らかしています。

ですので、皆さんが普通は書かないような事にこだわったりしてしまっています。

生理描写や衛生描写等が重く書いてる本人もスカッと全くしておりません。

お気に召さねばそっと閉じていただけると登場人物たちも喜ぶと思います。

それでも、お付き合いしていただける方はどうぞよろしくお願いいたします。


「....そう、それ。その『何を言っても無駄』みたいな、悟りを開いたような顔。失礼しちゃうわね」


ルナは市場の喧騒を抜けながら、リュンヌの視線を軽くいなした。


彼女にとって、教会の奉仕条件を書き換えることも、人の欲求を数値化して「ユニオン」に放り込むことも「当たり前」の事。


雨が降れば傘を差すのと同じくらいの行為なのだ。


「....ルナ。....あんた、....たぶん、....自分....が一番....まともだと....思ってる。」


「一番どころか、唯一無二にまともよ。皆、感情とかいう不安定な変数に振り回されすぎなの。私はそれを整えてあげているだけ。」


ルナは、リュンヌをあんたがまともではないという調子でチラ見する。


「....ほら、そのオレンジだって、そのままじゃ皮が厚くて食べにくいでしょう? 剥く(加工する)人が必要なのよ。」


リュンヌは抱えた袋の中のオレンジを見つめた。

この少女に「常識」や「畏怖」を説くのは、石に説法をするより難しい。


ルナの世界では、神様ですら「交渉可能な上位取引先」であり、人の心は「市場の流動性」でしかないのだ。


「....伝わらない。....一生、....平行線。」


「平行線ならいいじゃない。」


ルナはむしろ楽しそうに軽い足取りびなる。


「交わらなければ衝突もしないわ。あんたは私の隣で、適度に安息を得ながら、私という投資先をガードしていればいいの。」


選択肢がないのに、不思議とそこにリュンヌの怒りは向かない。


「....ねえ、リュンヌ?」


ルナは笑いながらリュンヌを振り返り後ろ向きで歩く。


「今日の夕食は、そのオレンジを使ったソースで肉を焼きましょう。大教会長から『先行投資』としてせしめた、いいお肉があるのよ。」


「....結局、....食べる....。....私も、....毒されてる。」


リュンヌは諦めて、一歩前を行く銀髪の背中を追った。

雷が落ちるなら、その時は一緒だ。


ルナのことだから、雷が落ちてくる瞬間にすら「この雷って売れないかしら」なんて計算を始めそうで、リュンヌは思わず小さく吹き出した。


「....ふふ、....ルナ、....やっぱり....変。」


「変じゃないわよ、『先進的』と言いなさい!」

夕焼けに染まる街路で、二人の噛み合わない、けれど不思議と安定した足音が響き続けている。


「さあ、これで次はおばちゃん達の投資信託のアセットを動かせるわよ。」


ルナはぶんぶんと腕を振る。


「....投資信託、....アセット、....また....ルナが....呪文を....唱えてる。」


リュンヌは、抱えたオレンジの重み以上に、ルナの言葉の「重さ」に肩を落とした。


教会の改革は、ルナにしてみればただの「土台作り」に過ぎなかったのだ。神官たちの給金が上がり、休暇で現金を落とす。


その「原材料」をさらにルナという巨大な攪拌機ミキサーに放り込み、街全体の資本を増殖させる....。


「あんたね、お金は川の流れと同じなのよ。一箇所に留まれば腐るし、ボウフラが湧くわ。」


お金と蚊では「カ」しか字が合っていない。

リュンヌは言葉を飲み込む。


「おばちゃんたちのタンスの中で眠っている金貨を、未来への『期待値』に変換してあげる……これ以上の慈善事業がどこにあるの?」


ルナは宿の階段を軽やかに登りながら、事も無げに言ってのける。


「....人の為、....じゃない。....それ、....絶対....ルナの....お金....肥えるやつ。」


宿の扉を開けながらリュンヌは確信をもってルナに告げた。


「失礼ね。私はただ『管理手数料』を適正に頂くだけよ。....さあ、リュンヌ。今日はもうおしまい。ここからは私の『非効率タイム』よ。」


ルナは休息宣言をする。でも効率だなんだかんだ言い続けることもリュンヌはわかっている。


「お風呂に入って、あんたが剥いたオレンジでソースを作って肉を焼いて食べて、泥のように眠るわ....。」


風呂とご飯の順番にはルナは妙に拘りがある。今日はどうも食事より先がいいらしい。


「明日からは、おばちゃんたちの『資産運用説明会(井戸端会議)』の護衛で忙しくなるんだから。」


ルナは部屋の扉を開け、神官服のボタンを一つ外した。


あんなに冷徹に「効率」を説いていた少女が、お風呂と食事のことだけは、子供のように純粋な楽しみにしている。


そのギャップだけが、リュンヌにとって唯一の「人間らしい」ルナを感じられる瞬間だった。


「....お風呂、....混み具合....見てくる。....ルナ、....それくらいしか....休めない....から。」


「助かるわ。その間の労働賃金は、夕食の肉のランクアップで相殺ペイしてあげるわね。」


どこまでも噛み合わない、けれど鉄壁の信頼関係。


この世界に「安息日」と「ベア」をもたらした二人の夜は、オレンジの爽やかな香りと、少しだけ豪華な夕食の匂いと共に更けていった。



勢いだけで2章まで駆け抜けて来ちゃいました。

リュンヌとルナがいい感じになってきてくれてるんですが、ルナの事をもうちょっと深掘りしたいんですよね。

ビジネス用語連発する理由とか。

二人とも無事に2章まで来た事はどう思ってるんだろう。

あと、ここまでお付き合いいただいている方、ありがとうございます。まだ、しつこく実験は続けますので引き続きよろしくお願いします。

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