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労使交渉と生贄(マスコット)

本作品は、中年のおっさんの個人的なAIへの興味から派生し始めたものにつき、

作者が好き放題書き散らかしています。

ですので、皆さんが普通は書かないような事にこだわったりしてしまっています。

生理描写や衛生描写等が重く書いてる本人もスカッと全くしておりません。

お気に召さねばそっと閉じていただけると登場人物たちも喜ぶと思います。

それでも、お付き合いしていただける方はどうぞよろしくお願いいたします。


「では、明日は交渉です。」


ルナは締めくくった。


「委員長様、信頼できる幹部を選んで明日の大教会長様との教義論争に臨みましょう。」


異世界初の労使交渉開催が明日開かれようとしていた。


皆、うすうす気づいていた欲求。休みたい。給金もうちょいほしい。ルナは見事につついたのだ。集団なら大丈夫と。


「....そうよ。一人で言えば不平不満、けれど皆で言えば『神の御心』になる。これが集団心理という名の魔法よ。」


ルナは部屋の窓を閉め、夜の闇に消えていく聖騎士たちの足音を聞きながら、冷徹に、そして満足げに微笑んだ。


「委員長様、幹部エグゼクティブの選定は終わったかしら?」


ルナは再度交渉の準備を確認する。


「 涙もろい若手、理論武装した古参、そして『安息』を切望する屈強な聖騎士....。」


さすがは次席司祭、その気になるとその誠実さは完璧な役員の人選に反映される。


「この布陣で挑めば、大教会長様も『慈悲』という名の署名をせざるを得ないわ。」


ルス教の歴史において、かつてこれほどまでに「現場の欲求」が聖域を揺るがしたことがあっただろうか。


明日の議題は、教義の解釈ではない。「いかに休み、いかに稼ぐか」なのだ。


翌日の午前。


大教会の重厚な扉が開かれ、次席司祭を筆頭とした「ムーンライト・ユニオン」の幹部たちが、一糸乱れぬ足取りで大教会長の執務室へと進む。


その光景を、宿の窓から見送る二人の姿があった。


「....ルナ、....本当....入るの?.... 私、....お腹、....まだ....まあまあ、....痛い....かも....。」


リュンヌは、ルナに買い与えられた萌黄色の「フワフワのリラックスウェア」のまま連れて来られている。


「何を言ってるの、リュンヌ。あんたは今日、交渉の席で『さもしい護衛の象徴』として、ただ弱々しく座っていればいいのよ。」


どこに行っても黙って座ってろ。ルナの指示は代わり映えがない。


「あんたのその、今にも倒れそうな絶妙な『不健康面ルックス』が、何よりも説得力のあるエビデンスなんだから。」


「....私、....ただの、....生贄マスコット。」


ルナは次の一言とともにリュンヌを教会内へ連れ込んだ。


「いいえ、あんたは『変革の女神』よ。さあ、行きましょう。ルス教の歴史が、今日、私たちの財布に有利な形へと書き換えられるわ!」


大教会長は突如現れた奇妙な一団に困惑する。女性次席司祭に男性司祭補佐、聖騎士団副団長に若手女性神官。


「なにか不都合でも....。」大教会長が言いかけたその時、扉を開けてルナがゆったりとした服のままのリュンヌを引きずって入ってきた。


次席司祭が交渉の開始を告げる。


「皆様の総意でございます。大教会長様。」


説教で評判の包容力のある彼女の声が、大教会長を取り込んで溶かす目的があるかのように広がっていく。

そして高らかに告げた。



「我々は、心身の健康と健全なる信仰心の為、ここに特別安息日制度ならびに憐憫浄財割合向上を要求いたします。」


リュンヌと大教会長は呆然である。


署名欄が埋まり尽くした、『安息日導入と憐憫浄財割合向上の嘆願書』を、大教会長の前に次席司祭は丁寧に置いた。


「....そう。ルス神様が与えてくださったこの『命』という資産を、摩耗させるだけでは不実というもの....。」


次席司祭は自信に満ちた声で続ける。

背景にあるのは数の力によるドーピングだ。


「さあ、大教会長様。あなたのその慈悲深き御手で、新しい時代の扉を開いてくださいませ。」


次席司祭の言葉に合わせ、後ろに控える幹部たちが一斉に、かつてないほど深く、そして力強い「祈りのポーズ」をとった。


その静寂には、祈りというよりは「署名をするまでここを動かない」という鉄の意志が宿っている。


大教会長は、あまりの光景に持っていた羽ペンをポトリと落とした。


「....あ、安息日....? 憐憫....向上....? ちょっと待ちたまえ、副団長。君までその、何だね、ユニオン? という腕章を付けているのはどういうことだね?」


「....報告いたします。我ら聖騎士団もまた、健全なる筋肉と安息なくしては、魔物からこの聖域を守り抜くことは不可能であると....悟った次第にあります!」


副団長の無駄に響き渡る返声が、部屋の空気を震わせる。


大教会長は事態の原因を見つけたかのように、一団の最後尾で静かにしているルナ、そしてその傍らでオドオドと戸惑っているリュンヌに目を向けた。


「....ルナ君。君は病み上がりだったはずだが....その、やけにリラックスした恰好の護衛さんとで、一体何をしているんだね?」


ルナは、神官服の裾を優雅に整え、まるで天使が舞い降りた様な微笑みと相反する鋭い光を宿した瞳を大教会長に向ける。


「....あら、失礼。大教会長様。私はただ、『神の家』がブラック....いえ、過酷な労働環境によって崩壊するのを防ぐために控えております。」


そして、これは自分の意でないとばかりに言う。


「単に皆様に適切なアドバイスを差し上げていただけですわ。....見てください、このリュンヌの痛ましい姿を。」


ルナがひょいと、死んだ魚のような目をしているリュンヌを前へ押し出す。


「....あ、....えっと、....はい。....安息、....大事....。」



大教会長に対して交渉開始ですが、ルナは次席司祭の影に隠れて動くつもりのようです。

でも、普段の言動でバレバレですね。通常なら。

可哀想なのはリュンヌです。

まさかの連れ出し。本当に座ってるだけで済むのかな?

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