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憐憫浄財割合向上(ベア)

本作品は、中年のおっさんの個人的なAIへの興味から派生し始めたものにつき、

作者が好き放題書き散らかしています。

ですので、皆さんが普通は書かないような事にこだわったりしてしまっています。

生理描写や衛生描写等が重く書いてる本人もスカッと全くしておりません。

お気に召さねばそっと閉じていただけると登場人物たちも喜ぶと思います。

それでも、お付き合いしていただける方はどうぞよろしくお願いいたします。


彼女の瞳には、もはや一国の革命家のような熱が宿っている。


「ルス神様は仰いました! 『光のもとで懸命に働けば、皆が幸福を得られる』と。」


また屁理屈の無限ループ開始だ。


「……ですが、痛みや苦しみを隠して働くことが、果たして神の望まれる『懸命』でしょうか!? いいえ、それはただの消耗です!」


ルナは次席司祭の隣で、朗々と説法を続ける。


「男性神官の皆様に『月の障り』はありません。……ですが! 突然の熱、不慮の怪我、そして心の疲弊……。」


病から一番遠いと思われる人物からの説得だが、次席司祭という権威がまぶされて、きらめいて降ってくる。


「病を患い、体が悲鳴を上げるのは同じはずですわ! なぜ女性だけが? なぜ病の時だけが?」


教会長選挙の演説より熱量が多い。

だって休みという生理的欲求だから。


「……いいえ、誰もが『健やかに奉仕するために休む』。その権利を、今ここで分かち合おうではありませんか!」


男性神官達からも声があがっていく。


「……た、確かに。我らとて、熱を押して典礼に立つことが美徳だと思っていたが……」


「そうか、休むこともまた、次の奉仕への『聖なる準備』なのか……!」


「病欠なら今でもできるのでは?」という至極真っ当な疑問を口にする者は、この熱狂の渦中には一人もいなかった。


ルナの語る「全神官安息計画」という壮大なヴィジョンの前では、既存の「病欠」などという小粒な制度は、もはや塵に等しい。


「さあ、男性神官の皆様も、このユニオンの『賛助会員』として名を連ねてください!」


ルナは嘆願書をベシベシ叩いて言う。


「 あなた方が私たちの痛みを理解し、支えてくださるなら……それは神が望まれた、真の平穏な教会の姿なのですわ!」


もはやムーブメントは止まらない。ルナという名の巨大な掘削機が、教会の古い「我慢の美徳」を粉砕し、更地にしていく。


「……そして、仕上げはこれよ。」


ルナは、署名で真っ黒になった紙の最下部、まるで神の啓示を書き記すかのような厳かな手つきで、その一筆を付け加えた。


憐憫浄財割合向上ベア


「ル、ルナ様……これは一体……?」


次席司祭が、その難解かつ高潔な(と錯覚させる)響きの言葉をなぞる。ルナは慈愛に満ちた微笑みを浮かべ、彼女の肩を抱いた。


「いいですか、次席司祭様。安息日を得て心が豊かになっても、お財布が痩せ細っていては真の平穏は訪れません。


人々に憐れみの心を説くあなた方こそ、その『憐憫の心』が形になった浄財(お給料)を、より正当に受け取るべきなのです。


これは、信仰の『ベース』を『アップ』させるための聖なる儀式ですわ」

「ベースを、アップ……。憐憫の、向上……! なんて素晴らしい響きでしょう!」


現場の神官たちは、ついに「休み」と「金」という、人間の二大欲求が神聖なる言葉で完全に肯定されたことに、理性をかなぐり捨てた。


教会の回廊は、もはや祝祭の広場と化している。

「ユニオン万歳! 次席司祭様万歳! そして、さもしい護衛さんとルナ同志に光あれ!!」


ルス教の教会はある意味自立傾向が強い。

そのため、賃金や休暇等の人事以外の運営は大教会長に任されている。


ルナは、教会をあたかも企業の様に見なし、瞬く間に多数派の労働者をまとめ上げてしまったのだ。そしてその波は更にうねって人をのむ。


「……あ、いや、俺たちはその……公務中だし……」


壁際で彫像のように直立していた聖騎士たちが、引き攣った笑いを浮かべて後ずさる。


だが、その退路は「ムーンライト・ユニオン」の腕章(即席の布切れ)を巻いた女性神官たちの包囲網によって、すでに断たれていた。


「何を仰るのです、聖騎士様。あなた方のその重い鎧、不規則な夜警……。」


元々が人々に慈悲を説く者達の集団である。

騎士の心を揺るがす表情など、女性神官にとっては簡単なものだ。


「それこそ『安息』が必要な、我らユニオンの守るべき同胞ではありませんか!」


別の女性神官が聖騎士の手を躊躇う事なく握りしめ説得する。聖騎士にとっては彼女の柔らかな手、それだけで痛恨の一撃だ。


「さあ、こちらに署名を。ルス神様の前では、祈る者も守る者も、等しく『ベース』が『アップ』されるべきなのですわ!」


聖騎士たちは顔を見合わせた。彼らとて人の子だ。連日の魔物警戒と教会の行事警備で、疲労はピークに達している。


「これにサインすれば、堂々と実家に帰れる……しかも給金が増えるのか?」という甘美な誘惑が、鋼の精神を容易く侵食していく。


「……よ、よし、わかった。我ら聖騎士団も、この『安息の光』を分かち合おう!」


一人がペンを取れば、あとは雪崩の如し。教会の武力組織までもが、ルナの敷いた「幸福のレール」の上を爆走し始めた。


その頃、大教会の最奥にある執務室では、大教会長が一人、静かに紅茶を啜っていた。

「……おや、今日はやけに外が賑やかだね。皆、ルス神様への感謝の祈りに熱が入っているのかな。喜ばしいことだ。」


彼は知らない。


自分の知らないところで、教会の運営コストが上がり、組織図が「労働組合」という名の全く別の何かに書き換える準備が完了したことを。


やっぱり休みだけじゃなくてお金絡めてきました。

ってもうみんな乗っかっちゃって、めちゃくちゃです。

実際に人をまとめて何かをしようと言うのはとっても大変だと思います。

こんな風に簡単だといいなと言う個人的な願望です。

さて、いよいよ次は大教会長と対決です。

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